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ニュースの現場で考えること

性犯罪をどう表記するか

お気に入りブログの「ある編集者の気になるノート」さんが、昨日の北大生による事件に関連して、「わいせつか、暴行か、強姦か。」という記事を書かれています。性犯罪において、いったいどういう表現・表記が良いのか、実に難しい問題です。このエントリから引用すると、各社の見出しはこうです。(以下引用)

小6女児にわいせつ行為、北大生逮捕・ネットで知り合う(日経新聞)
小6に乱暴、北大生を誘拐容疑で逮捕(読売新聞)
小6女児を誘拐し強姦、容疑の大学生を逮捕 札幌(朝日新聞)

もちろん、3紙とも伝える事実は同じである。
「わいせつ行為」も「乱暴」も「強姦」をさすことは明らかだ。
(引用終わり)

私の勤務先の北海道新聞HPは「北大生、小6に乱暴 ネットで誘い出し自宅へ 札幌中央署逮捕」という見出しです。

私の勤務先では事件報道において、特段の理由が無い限り、「強姦容疑」「強姦罪」「強姦」の用語は使っておらず、いずれも「女性暴行」という用語に言い換えています。言い換えを始めた最初の理由は判然としませんが、読んだ人が強い不快感を覚える、当事者やその家族等が辛い思いを倍加させてしまう、というところではないかと思います。この言い換えは、刑法に新設された「集団強姦罪」「集団強姦致死傷罪」でも同様です。



一方では「こうした言い換えは事件の実相を正確に反映していない」という考え方も当然にあり、2年程前、社内でも随分議論になりました。フェミニズム団体なども「強姦という言葉を使用しないことで、逆に性犯罪の酷さを覆い隠している」という主張をしています。こうした指摘はある意味正鵠を得ています。警察庁も重大犯罪としている6つの犯罪には「強制わいせつ」「強姦」ともに入っているように、この種の犯罪はどういう態様であれ、重罪であることに変わりはありません。
ただ、私は「ある編集者の・・・」さんが書かれた文章、すなわち「この言葉(=強姦)によって、心の中に、ザラっとしたものをねじりこまれるような感覚を覚える。べつに、事実をオブラートにくるむことがいいとは思わない。だけど、一糸まとわぬ事実を伝えることが必ずしも「正解」かどうかは、僕にもよくわからない。明日、各家庭に届く朝日新聞も、この見出しでいくのだろうか。言葉はときに、暴力より暴力的である」という内容に、深く感じ入りました。

筆舌に尽くしがたい被害者を前に、外野の人間が性犯罪の表記、その使用基準等を一般論として、あれこれ言うこと自体が、何か一線を超えているように思うことがあります。事件発生段階で、そうした被害者の声を直接聞くことは出来ません。聞きに行くべきでもありません。「強姦」か「乱暴」か、といった表現の問題ではなく、(いくら被害者の住所や年齢をぼかしたとしても)事件そのものを報じて欲しくないと思っている方々も相当に多いと思います。

ならば、その被害者の苦痛にできる限りの想像を及ぼし、最も刺激的でない言葉を探すほかはないのでしょう。「強姦」を「女性暴行」に言い換えたところで、被害者の苦痛は少しも減りはしないし、もっと妥当な表現があるのかもしれません。当事者が「許せないから、正確に強姦と書いて」と言い出さない以上、そうするいかないように思います。もちろん、被疑者の有罪が確定した場合は、きちんとその事実を伝えねばなりません。

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by masayuki_100 | 2005-02-24 18:19 | ■事件報道のあり方全般