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ニュースの現場で考えること

深い沈黙

ロンドンは9月10日の日曜日、昼である。日本は午後9時すぎ、もうすぐ日付が変わる。で、あと少しで、「9・11」から、ちょうど五年になる。すでに日本のメディアも種々の特集を組んでおり、当日になれば、さらにいろんな話題が沸騰するだろうと思う。

「9・11」から少し過ぎたころ、どうしても現場を見たくなり、休暇を取ってニューヨークに足を運んだ。行きの飛行機は乗客が10数人程度しかおらず、異常に静かだったことを覚えている。倒壊したビル現場へ向かう道には、長い長い行列ができていた。そして、それにもかかわらず、そこに向かう道も、奇妙に静かだった。きな臭さが残る中、多くの人が押し黙り、しゃべったとしてもヒソヒソ声で、行列はまさに、慰霊の群れだったように思う。

それから五年がたった。その間、ロンドンでもテロがあり、テロ計画発覚騒動があった。中東では毎日のようにテロがあり、ロンドンの新聞でも「WAR」などの大活字が躍らない日はない。どこかで読んだのだけれど、「9・11」で犠牲になった人の数よりも、その後の「テロとの戦い」で犠牲になった米国人の方が数は多くなったそうだ。

「9・11」が陰謀であったかどうかは、分からない。例えば、ヒロさん日記の記述を頼りにあちこちにネットサーフィンしていると、陰謀説をめぐる種々の議論があり、時間のたつのも忘れるほど引き込まれてしまう。

ただ、「テロとの戦い」は、この複雑な世の中にあって、どうも単純すぎる。「テロとの戦い」を結果として喚起する種々の出来事も、単純すぎるように思う。例えば、米大統領選の投票日の直前に、ビンラディンの映像が流れたことがあった。今年夏のロンドンの旅客機爆破テロ計画も、イスラエルによるレバノン侵攻が大問題になりつつある最中に起きた。つい先日は、米議会の報告書で「実はイラクのフセイン政権はアルカイダとは無関係だった」という結果も出てきた。

善か悪か右か左か。或いは上か下か斜め前か斜め後ろか。。。この複雑な世の中を、単純なスローガンや言説で切って見せようとするときは、やはり、どこかに作為が潜んでいるように思う。
単純な言葉の繰り返しよりも、深い沈黙の方が、人間らしさに溢れているように感じる。
by masayuki_100 | 2006-09-10 21:41 | ★ ロンドンから ★