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ニュースの現場で考えること

毎週末、元旦のような分厚い新聞が。

毎週末になると、ロンドンの各紙は、たいへんなことになる。とにかく、紙面が分厚い。ふだんでも、ページ数は多めだけれど、週末になると、別刷りもあわせて各紙とも軽く100ページを超すのではないか。日本の新聞の元旦号みたいなボリュームである。

さらに、ファッションや文化関連の雑誌、ガーデニング本、映画紹介のDVD、スペイン語学習用のソフトなど、いろんなものが「オマケ」についてくる。ほとんどの場合、こうした付録や別刷りがバラバラにならないようビニールで梱包され、街角の売店で平積みされているのだ。とにかく、スゴイ。

新聞をつくる側の立場からすれば、ページ数の多さが一番気になる。平日でも50ページ、60ページは当然だし、週末になると、100ページ以上。もちろん日曜は、同じ新聞でもまったく違うスタッフが作っているところもあるので、一概に日本とは比較できないが、どうして英国の新聞は、こうも分厚いのかと思う。広告も多いが記事も多い。

当地の新聞社の社内事情にまで立ち入って詳しく調べたわけではないが、外から紙面を見るだけでも、英国の新聞の紙面には、日本の一般紙とは違う特徴がいくつも見えてくる。それらをいくつか、ランダムに列挙してみると・・・・





(1)事件事故の記事に使う容疑者・被害者の顔写真が、やたらと大きい。日本ではだいたい、一段。2段の顔写真というのは、記憶にない。英語は横書きなので、写真や図版の大きさを表す際、「段」という概念はないと思うが、ふつう、英紙が載せる写真は3段程度だろうか。5段、6段ということも珍しくない。

(2)そういう大きな顔写真を使った記事は、毎日のように、どこかの面に載っている。しかし、その反面、いわゆる「事件雑報」が無い。興味・関心を引きそうな事件等は、ド派手に扱う一方、交通事故でだれそれが亡くなったとか、窃盗容疑者が逮捕されたとか、その種の、日本の新聞で言えば、20-30行程度の事件事故雑報が、事実上ないのだ。殺人などの凶悪犯罪でも、裁判が初報になることもある。

(3)よく言われることだが、1面の記事が文章の途中で「8ページへ続く」となっていたり、「12ページへどうぞ」となっていたり。。。日本の新聞は、整理部(見出し付けや紙面のレイアウトを行う部署)が腕ふるって、記事をその紙面で完結させ、数行の余白すらつくらない。その分、整理部は日本より省力化されており、その分、余った記者は現場記者として動くことができる。きちんと数字を比べたわけではないけれど、編集部門所属の人間における「内勤」「外勤」の比率は、英のほうが、「外勤」が高いのではないか。

(4)それに似た話だが、英では、事件事故に限らず、1本の原稿が日本の新聞より長い。内政面ではたとえば、「○○省が有識者会議を開きました」みたいな行政のPR的記事がほとんどないが、逆に、原稿が長いため、1ページ(ほとんどはタブロイド版型)に収容される記事は、せいぜい2-3本である。つまり、整理部記者の活躍する場面は、日本より少ないだろうと思う。外勤記者もいわゆる「雑報」に手足を取られることが少ない。もっとも、これは、通信社と新聞社の役割分担が欧米では進んでいることの結果かもしれないが。

(5)署名記事の署名は、単なる「記号」ではないようだ。記事の前文で、「・・・いったいこの事件はどうなっているのか? 弊紙きっての専門家、ヤマダタロウが報告する!」みたいな感じで記者を紹介している例も少なくない。たぶん、これを映像でやると、テレビのニュースショーの現場レポートみたいになるのかもしれない。

(6)記事に「続報スタイル」がほとんどない。日本の新聞では、たとえば、「ヤマダさんが2日に殺害された事件で、スズキ警察署は6日・・・」というスタイルの記事を良く見かける。これが続報だ。読者はすでにそのニュースを知っている、われわれが書いたから知っていて当然だ、というスタンスに立ち、続報スタイルで書くのだ。英紙では、こういうスタイルの記事は、ほとんどない。そもそも、「5W1H」が文章の冒頭に来るような記事が少ないのである。

(7)文章スタイルだけの問題ではなく、英では、ニュースの続報が少ない。逆に言うと、次から次へと新しいニュースが出てくる、作られてくる。ニュースの消費スピードが、日本の何倍も早い感じである。これはテレビも同じだ。だから、「あるニュースをある程度の期間、新聞が追っていく」という局面では、日本の新聞の方が、ニュースは丁寧につくっていると思う。


とまあ、思いつくままに並べてみた。まだロンドンへきて2ヶ月だし、細かなこと、専門的なことはまだよくわからない。それはおいおい、記していきたい。何の役に立つのか立たないのか、そのへんは自分でも不明だが、こういう「日英メディア比較」みたいな分野は、滞在期間中、じっくりと見つめていきたい感じている。

で、英国の新聞事情はどうなってるんだ?という方のために便利なページがある。「イギリス生活情報週刊紙」と銘打つ「ニュースダイジェスト」特集面である。この記事は4月中旬にロンドンで発行された紙面に掲載されたが、最近、ネットにもアップされた。手前味噌臭いが、そのページには私の支局のスタッフ、支局内部の写真まで登場しているのだ(^^;
by masayuki_100 | 2006-05-14 10:32 | ★ ロンドンから ★