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ニュースの現場で考えること

総選挙、北海道では民主党が勝った

総選挙が終わって、ちょうど1週間になる。選挙期間中は札幌の本社に呼び戻され、3週間近く東京を不在にしていた。戻ってみたら、すっかり秋で、しかも今日は秋の満月だ。中空の月がひときわ綺麗で、銭湯の帰り、しばらく見とれていた。

月月に月みる月は多けれど 月見る月はこの月の月

という、まさにその感じである。私が住んでいるのは新宿区だが、このへんではコオロギが盛んに鳴いていて、無味乾燥な感じは全くしないのだ。

選挙からだいぶ日数が過ぎたこともあって、選挙について書くのは少し気が引けるが、◆木偶の妄言◆さんのエントリにもあったように、なんで北海道は民主党の議席が多かったのか、という点は興味がある。12の小選挙区のうち、自民党が勝ったのは4つだけ。しかも、そのうち3つは、外務大臣、経済産業大臣、党幹事長である(いずれも現職)。いわば勝って当然の大物だった。そのアドバンテージを考えると、民主が勝ったことが際立つ。日本全体の傾向とは明らかに違う。比例区の得票も、民主党の109万727票に対し、自民党は94万705票だった。およそ15万票の差がある。

ほかに全国と違う点は、新党大地の存在だろうか。新党大地の43万3938票だから、仮に新党大地が出ていなかったら、もう少し自民党は増えたかもしれないと思うものの、新党大地の票には民主支持層も相当に含まれている可能性があり、こうした仮定はあまり意味がないかもしれない。ただ、札幌市中央区などの「北海道1区」は、新人の自民党候補が相当に善戦した。もしかしたら民主党の横路孝弘氏に勝つかもしれない、と思わせる雰囲気があった。

で、なぜ民主党が自民党よりも多くの議席を獲得したか、という話なのだが、「想像」「推測」を交えながらいくつか思いついたことを記してみると、以下のようになる。もちろん、すべて「勝手分析」なので、誤解なきように。

(1)北海道は景気が回復しているという実感がほとんどない。完全失業率は5・7%ほどで全国平均より1ポイントほども悪い。いまの景気回復は大企業・中堅企業中心のものであって、中小・零細企業の景況感は大企業・中堅企業と差が開き、縮まる気配がない。これについては、「kitanoのアレ」さんが分かりやすく書いている。景気回復の実感が全くないところで、「小泉政権の過去の構造改革の成果」を喧伝したところで、「それ、なんだ?」という感じだったのではないか。逆に、例えば新党大地は「 今行われている構造改革では、勝ち組と負け組の格差が広がる。これに対して、弱い立場の人を守る公平配分型の政治を行う」と主張していたが、そういった主張のほうが道民には実感を持って伝わったのではないか。

(2)小泉首相は「郵政民営化」を中心に訴えたが、その流れ、ムードを簡単に言うと、「公務員叩き」だった。「公務員を守るものは悪い」という流れを実に演出したと思う。ところで、北海道は今なお「官の王国」である。公務員の実数とは別に、公共事業を中心として、経済の官依存度も高い。そこに連なる産業の裾野も広い。製造業が極端に少ないこともあって、民間主導の自律的な景気回復などとても望める状況ではないし、それに向けた明確な青写真もない。そういう状況の下で「公務員は悪い」「官は悪い」という路線を強調したことで、道民(含む公務員)はつまるところ、「北海道の状況がもっと悪くなるのは仕方ないというのか?」といった反発を覚えたのではないか。あるいは、「構造改革の推進=北海道のような地方切捨て」と感じたのかもしれない。



(3)8-9月の北海道は、間もなくやってくる冬を前にした最後の「外遊び」の季節である。9月下旬には大雪山系黒岳に初雪が降る。そういう時期だからこそ、道民は、去る夏を惜しむように庭の手入れをしたり、山歩きを楽しんだり、とにかく外に出る。つまり昼間に家に居ないのである。だから、テレビのワイドショーを見る時間が少なかったのではないか。北海道は冬が長いため、テレビを見る時間は本州より長いが、5月下旬から9月初旬にかけてはそうではない(ように思う)。したがって、ワイドショーで盛んに報じられた「刺客騒動」が本州ほど浸透しなかった。もう一つ付け加えると、(これはテレビ局の友人に聞いた話だが)ワイドショーを見るのは主婦ばかりではなく、最近では、昼間の時間帯に家に居る若者もよく見ているという。

(4)新党大地の影響度。先にも触れたように、新党大地は鈴木宗男氏の知名度等もあって、北海道ではかなりの影響があった。それは、自民支持票を食ったとか食わなかっただけではない。新党大地が訴えていた内容は、いわゆる自民党橋本派がかつて訴えていた内容に近い。ひところ前の保守本流、宮沢喜一氏が総理だったころの内容と似ているところもある。ところで、新党大地が訴えた「公平な分配」など、聞きようによっては共産党か社民党の主張である。鈴木宗男氏は北海道では注目度が高かったので、多くの人がその主張に耳を傾けた(と想像する)。で、その主張にも同意したが、しかし、刑事被告人という部分に引っかかるものを感じた人は少なくなかった(と想像する)。そうやって、「覚醒」した人々が、「構造改革の自民党はなるほど勝ち組・負け組の格差を広げるだけだ。しかし、新党大地も引っかかる。ならば、ここは反自民・非大地で投票するしかないな」と動いた(のではないか)。

(5)自民党候補に新人がほとんどおらず、新鮮さがなかった。今回の選挙結果は、都市部において自民への投票がなだれを打ったのが特徴だが、北海道では大都市札幌を抱え込んだ選挙区(1区から5区)の自民党候補は、1区が新人だったほかは、前職か元職だった。そして元職の2人はいずれも敗れている(これに反し、39歳の若い1区候補は大健闘した)。似たような傾向は、他の道内選挙区でも散見される。つまり、改革を掲げる自民に投票したかった人たちは、候補に新鮮さがなく(新人であっても何度か立候補した経験を持つ人ばかりで、初めて立候補した自民候補はいなかった)、候補に「勢い」を感じなかったのではないか。北海道は本州大都市ほど人口も流動化していないので、前回選挙の印象もありありと残っているのである。一方、10区では、「刺客」の一人だった女性新人候補が敗れた。しかし、前職の無所属候補(元々は自民党)の票を合わせると、当選した民主候補を大きく上回っている。「刺客効果」はあったのだが、保守共倒れになった。


思いついたことを未整理のままに書き連ねたが、だいたい、こんなところだろうか。最初に断わったとおり、この「勝手分析」は、私個人の「印象」で書いている。それ以上でも以下でもない。なお、道内の詳しい選挙データはここへどうぞ
by masayuki_100 | 2005-09-19 01:35 | ■2005 東京発■