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ニュースの現場で考えること

ソースの明示

事件事故報道でよく使われる「●●ということが捜査本部の調べで分かった」という記述があります。この表記がはらむ問題点については、メディアの辺境地帯さんや、雑観練習帳さんが、ネット上で指摘されています。とくに、辺境地帯さんの指摘「日本型犯罪報道・9つの大罪」はなかなか鋭く、この点を真正面から問われたら、事件事故取材に従事している人は、ほとんど反論できないのではないかと思います。

ソースの明示は、実は、やればできるのではないかと最近考えています。表現方法を変革することに、大きな不利益を見出すことが今のところ出来ません。雑観練習帳さんも「実例見本」を示されていますが、例えば、こんな感じになるのではないかと思います。

<今までの例>
 偽造カードを使って商品をだまし取ったとして中央署は七日、詐欺の疑いで、山田市中央区の無職、山田太郎容疑者(30)を逮捕した。調べによると、山田容疑者は昨年七月、山田市西区の家電量販店で、デジタルカメラ2台(約十万円相当)を偽造カードで買い、だまし取った疑い。これまでの調べに対し、山田容疑者は容疑事実を認めているという。また、東京などの本州各地で、同様の手口により、パソコンなど約百点(総額約五百万円相当)を詐取したことを自供しているという。

<ソースを明示した場合>
 偽造カードを使って商品をだまし取ったとして中央署は七日、詐欺の疑いで、山田市中央区の無職、山田太郎容疑者(30)を逮捕した、と発表した。発表によると、山田容疑者は昨年七月、山田市西区の家電量販店で、デジタルカメラ2台(約十万円相当)を偽造カードで買い、だまし取った疑い。中央署の広報担当者(あるいは広報責任者である副署長の名前を明記)は「山田容疑者は容疑事実を認めている。東京などの本州各地で、同様の手口により、パソコンなど約百点(総額約五百万円相当)を詐取したことを自供している」と話している。

さらに、このソース明示型原稿にはこんな文章を付けることが可能です。



一方、山田容疑者と接見した当番弁護士は取材に対し「山田容疑者は逮捕容疑を認めていない」と語った。

これは発表モノに限ったスタイルです。
いわゆる捜査の途中経過ものをこの方式で書いていくとすれば、こんな感じになりそうです。

 ○○事件について県警の捜査幹部は七日、「犯行の動機は怨恨だった」と××新聞の記者に語った。この幹部によると、「容疑者は被害者の老人をものすごく恨んでいた。犯行も計画的だった」という。しかし、××新聞の取材に対し、容疑者の弁護士は「怨恨でも計画的でもないと思う。彼は事件は偶発的だったと言っている」と説明している。

現行の記事スタイルに慣れ親しんだ身には違和感があるかもしれませんが、こんなの、ただの馴れではないかな、と思います。要は、取材者が得た情報は正式発表か否か、それをどう裏付けたか、ということを記事中で明示するということですから。広報責任者である副署長らの固有名詞を出すことについては、警察当局などから反発を受けそうですが、「強制捜査」という重大・強大な権力を持っていることから考えても、警察・司法当局の公式見解は実名で披露されるべきだと考えます。実は、昔の、例えば昭和30年代ごろ以前の新聞をめくって事件記事を読んでいると、その観点は別にして、結構、警察官が実名で登場します。「山田巡査が現場に臨場したところ、」とか、「鈴木警部が××新聞記者に語ったところでは」とか、そんな枕言葉は山のようにあります(もっとも、それに続いて、いかに「犯人」がひどい男だったかと綴っているのですが)。それどころか、「犯人の供述」というコーナーでは、それこそ現代の新聞がよくやる「裁判の判決要旨」みたいな感じで、供述内容が山のように書かれているのです。逮捕直後などに。ソースの明示という意味では、以前の方がはっきりしていたのかもしれません。

もっと突き進めて言えば、強制捜査に関する令状を発付した裁判官、起訴した検察官らも実名を書くことが必要なのではないかと。他の分野では組織人が職務として行動した場合であっても、結構、個人名が出てきます。ところが警察当局の場合は、重大事件を解決した際の記者会見等は別にして、なかなか氏名が登場しません。論理的には「なぜ当局の個人名が必要か」をまだ上手く説明できませんが、感覚的にはどうもヘンだな、と思うのです。

この問題についても、考え方をどう整理すれば良いか、実行に移すとしたら、どういう順序でどうやったら実現できるか、等を少し研究しています。
ソースの明示_c0010784_17453890.gif
by masayuki_100 | 2005-01-10 21:05 | |--ソースの明示