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ニュースの現場で考えること

ネットメディアの新しい形

先だって、「日本でオルタナティブ・メディアをどうつくるか」(既存メディアとは違った新たなメディア、という程度の意味)というエントリを書き、多くのコメントやトラックバックをいただいた。とくに、私が勝手に送ったトラックバックを「宿題」だとして、「オルタナティブ・メディアについて」という記事をわざわざ書いてくださったテサラックのあいださん、ありがとうございました。そうした意見も参考に、私はその後もつらつらと、「新しい形」をぼんやりと考えている。

最近、一番参考になるのは、「Grip Blog ~ 私が見た事実」である。主宰者の泉あいさんとは、何度か会って話し込んだこともあるが、このブログは、「報道」の観点からみて、最近にないヒットだと感じている。どこかどう素晴らしいか。私なりに解釈すると、こういうことだ。

(1)名前出し、顔出し。書き手の存在がはっきりと目に見える。
(2)自分で足を運び、そこで得た事実をはっきりそれと分かる形(1人称)で記載している。文字通り「私の見た事実」であって、情報には、いわゆる純粋な意味での「客観的事実」など存在していないことを最初から前提にしている。
(3)誰かにインタビューする際、事前にそれを告知し、質問内容を広く公募するなど「双方向」の強みをふんだんに生かしている(衆院選における各党の候補予定者へのインタビューなど)。その結果も、種々のエントリで書き連ねている。
(4)相手側とのやり取りも含め、取材の経過を示している(警視庁記者クラブ問題など)。
(5)文章が的確。かなり上手い。

さらに言えば、「大卒が入社試験の必須要件であり、その後の下積み時代を経て、ようやく書きたいポジションに座ることが出来る」といった、既存メディア企業の旧弊も、この「Grip Blog」は軽々と超えようとしているのかもしれない。発信媒体(この場合はブログ)さえ準備が出来て、そして、熱意と戦術と若干のスキル等があれば、だれでも、記者になれるという事実を証明しているように思う。

ネット上には、同様に素晴らしいブログがたくさんある。

反骨のジャーナリスト、山岡俊介さんの「ストレイ・ドッグ」、ビデオジャーナリスト神保哲生さんのブログ、的確で簡潔な指摘が鋭い「木偶の妄言」さんのブログ、、、数えていくときりがなくなるが、こうしたブログには共通項がある。

実名でブログを作成し、なおかつ、自分の足で集めた情報を発信していることが、明確に分かる点だ。どこかで、どなたかが使っておられたが、「取材するブログ」という言葉が一番ぴったり来る。匿名ブログの場合は、必ずしも「取材するブログ」という特色は出し切れていないが、しかし、伝えたいこと、言い換えれば、当人の立ち位置が非常に鮮明だ(もちろん私は匿名ブログは全く否定していない。その理由は過去に何度か書いたので、繰り返さない)。





おそらく、「Grip Blog」のような、双方向性の特性を上手に生かし、かつ取材過程も見せていく「取材するブログ」が、あと10個ぐらいできれば、おそらく、実社会に対して一定程度の影響力を持つようになるのではないか。とくに、既存メディアにとっては、困ったことになっていくのではないか、との予感がある。こうしたブログがひと塊になって、同一のホームページ上に「入り口」を設けるなどすれば、その存在感は一層増すかもしれない。

もっとも、「Grip Blog」が実行している「取材」は、既存メディアが連日連夜行っている取材と比較して、どこかが違っているわけではない。「取材」行為そのものは、基本的に同じである。

ただし、取材過程および取材結果の「見せ方」は決定的に違う。例えば、いま、各新聞紙上では、総選挙を前にして各党代表者の個別インタビューが掲載されているが、字数はおおむね、どこも千字程度だ。インタビューの時間が仮に20分だったとして、それを千字程度で表現するには、どこかで何かを削り、縮め、要約する必要が生じる。紙幅に限界がある以上、それは止むを得ないことではあるが、ネット上での事実上の「文字数無制限」と較べると、決定的に見劣りがする。もちろん、「Grip Blog」のエントリも、そうした編集作業からは無縁ではないと思うが(ビデオは別)、その文字数の差は、かなり大きい。

ネット上ではこれまで、JANJANや日刊ベリタ、Mynewsjapan、ライブドアのPJなど「ネット上での新しい報道の形」を求めて、種々の新しい試みが登場した。それをどう評価するかは、人それぞれのモノサシがあるし、私も何とも言えないが、面白さという点で言えば、断然、「Grip Blog」的手法がおもしろいと私は思う。とくに、最初に例示した私流の解釈のうち、 (2)の「自分で足を運び、そこで得た事実をはっきりそれと分かる形(1人称)で記載している」、(3)の「誰かにインタビューする際、事前にそれを告知し、質問内容を広く公募するなど「双方向」の強みをふんだんに生かしている」、(4)の「取材の経過を示している」、の3点は、この先も相当な威力を示していくと思う。

そんなことをつらつら考えていると、既存メディア内に居る私などは、どうしても、(2)(3)(4)みたいなことをネット上で、新聞社がやったらどうだろうか、と考えてしまうのだ。
by masayuki_100 | 2005-08-27 23:06 | ■ネット時代の報道