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ニュースの現場で考えること

逮捕の公表法制化は必要か

ジャーナリスト考現学氏から逮捕の公表制度(法制化)についてどう考えるか、という提起がありました。(原文は同氏の「警察発表を法制化せよ」)。

現在、警察は匿名発表の比率をどんどん増やしています。被害者からの要請があった場合は、被害者の氏名を公表しません。その間の経緯は、警察庁も何かの審議会(資料が行方不明になったので探しています)で何度か公言しています。簡単に言えば、警察庁がそういう指導をしているということです。

また、「警察発表を法制化せよ」では、こう言っています。

こうした動きを後押ししているのが、何とも悲しいことに一部の記者たちである。いわゆる「匿名報道」を推進する人たちだ。 匿名報道そのものは、大変意義あることだと思う。不必要に実名を報道することで、報道された人たちを傷つけることがある。しかし、匿名報道が広がるなか、警察はそれに乗じて公表範囲を狭めているというのが現状だ。

まず事実認識として、「匿名報道が広がる中、警察はそれに乗じて公表範囲を狭めているというのが現状だ」というのは、違うと思います。警察が乗じているのは、匿名報道の広がりなどではなくて(実際、匿名報道が広がっているとは思いません)、メディアが、犯罪被害者のプライバシーなどを不必要にあばきたて、お祭りのような集中豪雨的報道を繰り返し、それによって被害者が「もうたまらぬ」との思いをさらに強くしている、その動きに乗じているのです。これは「桶川ストーカー事件」の際の初期報道を振り返れば、よく分かると思います。

実際、今は、現場記者の意図はどうあれ、結果として、センセーショナルな事件報道があふれているじゃないですか? で、そのつど、「そっとしておいてください」という被害者家族のコメントが出て、それでもマスコミは押しかけ、、、という図式です。警察庁側の種々の発言も、そうした流れになっています。

以上は被害者の匿名についての話です。以下は被疑者の話。




匿名報道の是非については別の機会に書こうと思いますが、つまり、いまのような事件報道
が続く中で、逮捕発表が法制化されたらどうなるか、ということがこの問題の焦点です。結論を先に言えば、今の状況下で逮捕がすべて公表されれば、結果的、事件事故を面白く伝えるための端緒・道具になるだけではないか、その危惧が消えません。報道側も加わった「犯人探し」や「センセーショナリズム」が繰り返される中、「公表」が制度となったならば、その名簿自体があらゆるところに流れ、飛び交い、それこそ「不当」逮捕された人々が周囲から白眼視される傾向を強めるだけのような気がします。

報道が常に捜査当局と対峙しているならば、話は別です。そこでは、ジャーナリスト考現学氏も言うように、公表制度が権力監視の一端を担うことにもなるでしょう。報道が「ペンを持ったおもわりさん」でなくなったときにのみ、これは有用になる。そう思います。

むしろ、逮捕権の濫用を防ぐ等の意味からいえば、逮捕公表の制度化よりも、もっと必要なのは「密室司法」「暗闇司法」などと形容される、捜査段階での密室性の排除です。刑事裁判でいつも問題になるのは、自白調書の任意性・信用性の問題です。これを防ぐには、密室の中での取り調べに風穴を開けるしかありません。つまり、起訴前の被疑者に国選弁護人をつける。これが一番、有効ではないでしょうか。あるいは、欧米のよに任意性を担保するために、取り調べの状況をすべてビデオ収録しておくことも有効かもしれません。

被疑者段階での取り調べに弁護士を、などというと、「被疑者の人権ばかり守ってどうする」といわれそうですが、人権は被疑者も被害者も守らなければならないのです。また、強圧的な態度で取った調書は、有罪無罪は別にして、事件の真相解明の妨げ(動機の解明)になるような気もします。
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by masayuki_100 | 2005-01-08 10:39 | |--逮捕予告は権力監視?