2005年 01月 01日
札幌の市川弁護士は国会で何を語ったか
国会議事録で読めます。
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札幌から参りました。
私が昨年の十二月、北海道警察の不正経理疑惑問題にかかわるようになって、私の身の回りからいろいろなことの忠告を受けました。一番大きいのは、大丈夫か、身辺に気をつけた方がいいぞという忠告が多かったのです。これはどういう意味かといいますと、警察というのは、どういうところか、わけのわからないところだから、身辺によっぽど気を配った方がいいよという忠告なんですね。
私は、それを聞いて非常に驚きました。警察というのは本来、国民の市民生活、国民の生活を守るための組織にもかかわらず、国民の多くの人、少なくとも私の身の回りの人たちは、警察はわけのわからないところだ、警察の疑惑問題なんて追及していると身が危ないよという忠告をする、そういう国民意識が世論として少なくとも私の身の回りにはあるということに実は驚いたわけです。そういう国民の世論を前提とするならば、現在問題となっている警察の疑惑を徹底して明らかにして信頼できる警察にするということは、かなり至難のわざではないかというふうに考えているところです。
ところで、不正経理疑惑といいますのは、もう先生方御存じだと思いますけれども、国費、北海道あるいは都道府県費を問わず、支出関係書類を偽造して、真実支出していないにもかかわらず、支出したことにしてそれを裏金に回す、裏金に回したお金がどのように使われているかは国民には全くわからないという疑惑です。
これが北海道で発覚したのは、昨年の十一月、旭川中央警察署からの内部告発がもとでした。その関係書類によりますと、捜査用報償費、これは道費です、その使用使途について、架空人あるいは死人、そういう人を協力者としてつくり上げ、そういう人たちの領収書を添付して、あたかも支出されたかのように関係書類が整っていた、あるいは、実在している人でも、名義を勝手に使われて知らぬ間に自分が協力者になっていたということを指します。その結果、お金が裏金に回ったということです。
その後、弟子屈署という道東にある小さな警察署ですが、そこの元次長が実名で告白をしました。彼は、みずから金庫番として裏金をプールしていました、その裏金を幹部交際費等に渡しておりましたという告白をしました。
それだけではなくて、釧路方面本部本部長をされていた原田宏二さんも実名告発をいたしました。彼によりますと、彼は内閣委員会で証言しておりますけれども、退職するまで十七の所属でいわゆる裏金づくりに関与していた、また、その一部を受け取り、または接待などに費消したことがあると言っております。具体的には、会計担当者が本部会計部門から内示された予算を、架空の支出関係書類を所属の職員などに作成させ、これを現金化、各所属のナンバーツーの副署長等が裏帳簿で管理するシステムが厳然と存在していたと証言いたしました。対象予算は、道費に限らず、国費の旅費、捜査費、あらゆる費目に及んでいるということでした。
このような不正疑惑が現在北海道で起こっているわけですが、最近は、北海道にとどまらず、全国にこのような疑惑が指摘されているというふうに報道で知っております。
では、このような不正疑惑を引き起こす警察が信頼回復のために必要なことは何なのか。単純だと思います。二つ。一つは徹底した真実の究明、もう一つは迅速な情報公開。この二つさえあれば、警察は優に信頼を回復できるだろう。
徹底した真相の究明という点では、一つは、原田宏二さんが指摘するような厳然としている裏金づくりシステム、これを明らかにすることである。もう一つは、つくった裏金をどのように使ったか、使い道を明らかにすることだろうと思います。
きょうは時間がありませんので、その裏金システムについて、では、今まで真相が明らかになったのかどうかについて触れたいと思います。
まず一つは、弟子屈署の問題です。
弟子屈署では今監査が行われておりまして、きょう監査結果が発表されるというふうに聞いておりますけれども、道費に限らず、捜査費が裏金に回っていた。
今、私の手元に、その捜査費の設定書というものがあります。設定書というのは、裏金をつくるに当たって、だれにどのような領収書を書いてもらうのか、にせの領収書を書いてもらうのかという設定書です。
ここでは、毎月三万円ほどの協力者に対する謝礼というものが払われておりますが、これが固定協力者ということです。固定ということは、長年にわたってその架空の協力者に支払う。つまり、領収書をつくるに当たって月々の領収書の筆跡が異なってはいけないので、その架空人の書く領収書、それを職員に特定する、ある職員に書いてもらうということです。その職員が転勤したらどうなるのか。これは、架空の協力者を違う架空の協力者に変えるということをやっておりました。
私の手元には、平成八年以降の固定の協力者に対する設定書というものがあります。具体的に、だれに書いてもらったのか、どこで渡したことにするのか、月々の金額。例えば、平成十二年は四月十五日に三万円、五月七日に三万円というふうに、日付まできれいに書かれております。
さらに、この捜査費というのは、方面本部から現金書留で来ます。現金書留の封筒の中に、交付申請書と領収書が書かれている。交付申請書は領収書より後になっては困るので、その前に本来交付申請するものですから、鉛筆書きで、方面本部の会計課から、この日を書いて出すようにという指示まで具体的にあります。
そのような形で、弟子屈署では、国費である捜査費が長年にわたって裏金に回っていた。それは現在の監査ではできません、道費ではありませんので。では、警察が中間報告で発表したかというと、しておりません。この点でも、弟子屈署においてもまだまだ真相は明らかになっていないということです。
二点目。私の手元に、ある内部告発者の方が裏金帳簿を出してくれました。これはちょっと古いんです、どこの警察署かは本人との約束で言えません。これによりますと、副署長の領収印があります。これは中規模の警察署で、人件費を除いた警察予算が約四千万円、そのうち、約六百万円が裏金に回っていた。一五%です。人件費を除いた予算の一五%が裏金に回っていた。
これは中規模署ですから、五十人前後の小さな警察署です。これが百人、二百人、三百人規模の警察署では、一体、年間どのくらいのお金が裏金に回るのでしょうか。つまり、北海道においても、弟子屈と旭川中央署は明らかになっているけれども、まだまだほかにいっぱい警察署がある、疑惑を指摘されるべき警察署がいっぱいあるということです。これについては何も明らかになっていないということです。
もう一点言いたいと思います。
私の手元に、北海道警察本部会計課がつくった「新任副署長・次長研修資料」というものがあります。取扱注意と。
最初読んだとき、何だかよくわかりませんでした。普通の、会計は適正にやりなさいと指摘している文書のように思えました。しかし、そうであればなぜ取扱注意なのか、それがわからなかった。
中をいろいろ読み進むうちに、こういう記述があります。「捜査費を使用する捜査員の中には、その経理に疑問をもつ者もあり、これらの職員がときとして内部告発となって現れることが考えられることを常に念頭におく必要がある。」つまり、内部告発されることを常に念頭に置いて経理をしなさいと。これは、裏金をつくりなさいという指示書だと思います。つまり、裏金をつくるに当たって、新任の副署長、次長に対して、北海道警察本部会計課が、研修のための資料までつくっているということです。
そのほか、どういうものがあるかというと、会計職員として不適格と認められる者は英断をもって排除すると。
副署長というのは人事権を持っていないと私は理解しております。その副署長に対する研修で、会計職員として不適格である場合英断をもって排除する、つまり、排除しなさいと。疑問を持つような、正しく利用を考えるような会計職員は直ちに排除するように、英断をもって排除するように、こういう研修を行っているということであります。
時間がありません。これ以外にも、例えば、監査用のチェックリスト、こういうものを提出しなさいとか、チェックしなさいとか、あるいは問答集ですね、監査においてこういう指摘があったけれども、こうこうこういうふうに答えなさいというような資料も内部告発として私の手元に入っております。
このようなことを考えますと、依然真相は全くやみの中、解明されていないということです。ですから、真相が解明されていない以上、これからやらなければいけないし、やらない以上は警察の信頼は絶対に回復できないであろうと私は思っております。
以上です。(拍手)
北海道警の裏金問題を追及する市川守弘弁護士は2004年4月28日、衆院内閣委員会で参考人として出席し、裏金問題をどう捉えているかを語りました。冒頭発言は以下の通りです。詳細は**************************************
札幌から参りました。
私が昨年の十二月、北海道警察の不正経理疑惑問題にかかわるようになって、私の身の回りからいろいろなことの忠告を受けました。一番大きいのは、大丈夫か、身辺に気をつけた方がいいぞという忠告が多かったのです。これはどういう意味かといいますと、警察というのは、どういうところか、わけのわからないところだから、身辺によっぽど気を配った方がいいよという忠告なんですね。
私は、それを聞いて非常に驚きました。警察というのは本来、国民の市民生活、国民の生活を守るための組織にもかかわらず、国民の多くの人、少なくとも私の身の回りの人たちは、警察はわけのわからないところだ、警察の疑惑問題なんて追及していると身が危ないよという忠告をする、そういう国民意識が世論として少なくとも私の身の回りにはあるということに実は驚いたわけです。そういう国民の世論を前提とするならば、現在問題となっている警察の疑惑を徹底して明らかにして信頼できる警察にするということは、かなり至難のわざではないかというふうに考えているところです。
ところで、不正経理疑惑といいますのは、もう先生方御存じだと思いますけれども、国費、北海道あるいは都道府県費を問わず、支出関係書類を偽造して、真実支出していないにもかかわらず、支出したことにしてそれを裏金に回す、裏金に回したお金がどのように使われているかは国民には全くわからないという疑惑です。
これが北海道で発覚したのは、昨年の十一月、旭川中央警察署からの内部告発がもとでした。その関係書類によりますと、捜査用報償費、これは道費です、その使用使途について、架空人あるいは死人、そういう人を協力者としてつくり上げ、そういう人たちの領収書を添付して、あたかも支出されたかのように関係書類が整っていた、あるいは、実在している人でも、名義を勝手に使われて知らぬ間に自分が協力者になっていたということを指します。その結果、お金が裏金に回ったということです。
その後、弟子屈署という道東にある小さな警察署ですが、そこの元次長が実名で告白をしました。彼は、みずから金庫番として裏金をプールしていました、その裏金を幹部交際費等に渡しておりましたという告白をしました。
それだけではなくて、釧路方面本部本部長をされていた原田宏二さんも実名告発をいたしました。彼によりますと、彼は内閣委員会で証言しておりますけれども、退職するまで十七の所属でいわゆる裏金づくりに関与していた、また、その一部を受け取り、または接待などに費消したことがあると言っております。具体的には、会計担当者が本部会計部門から内示された予算を、架空の支出関係書類を所属の職員などに作成させ、これを現金化、各所属のナンバーツーの副署長等が裏帳簿で管理するシステムが厳然と存在していたと証言いたしました。対象予算は、道費に限らず、国費の旅費、捜査費、あらゆる費目に及んでいるということでした。
このような不正疑惑が現在北海道で起こっているわけですが、最近は、北海道にとどまらず、全国にこのような疑惑が指摘されているというふうに報道で知っております。
では、このような不正疑惑を引き起こす警察が信頼回復のために必要なことは何なのか。単純だと思います。二つ。一つは徹底した真実の究明、もう一つは迅速な情報公開。この二つさえあれば、警察は優に信頼を回復できるだろう。
徹底した真相の究明という点では、一つは、原田宏二さんが指摘するような厳然としている裏金づくりシステム、これを明らかにすることである。もう一つは、つくった裏金をどのように使ったか、使い道を明らかにすることだろうと思います。
きょうは時間がありませんので、その裏金システムについて、では、今まで真相が明らかになったのかどうかについて触れたいと思います。
まず一つは、弟子屈署の問題です。
弟子屈署では今監査が行われておりまして、きょう監査結果が発表されるというふうに聞いておりますけれども、道費に限らず、捜査費が裏金に回っていた。
今、私の手元に、その捜査費の設定書というものがあります。設定書というのは、裏金をつくるに当たって、だれにどのような領収書を書いてもらうのか、にせの領収書を書いてもらうのかという設定書です。
ここでは、毎月三万円ほどの協力者に対する謝礼というものが払われておりますが、これが固定協力者ということです。固定ということは、長年にわたってその架空の協力者に支払う。つまり、領収書をつくるに当たって月々の領収書の筆跡が異なってはいけないので、その架空人の書く領収書、それを職員に特定する、ある職員に書いてもらうということです。その職員が転勤したらどうなるのか。これは、架空の協力者を違う架空の協力者に変えるということをやっておりました。
私の手元には、平成八年以降の固定の協力者に対する設定書というものがあります。具体的に、だれに書いてもらったのか、どこで渡したことにするのか、月々の金額。例えば、平成十二年は四月十五日に三万円、五月七日に三万円というふうに、日付まできれいに書かれております。
さらに、この捜査費というのは、方面本部から現金書留で来ます。現金書留の封筒の中に、交付申請書と領収書が書かれている。交付申請書は領収書より後になっては困るので、その前に本来交付申請するものですから、鉛筆書きで、方面本部の会計課から、この日を書いて出すようにという指示まで具体的にあります。
そのような形で、弟子屈署では、国費である捜査費が長年にわたって裏金に回っていた。それは現在の監査ではできません、道費ではありませんので。では、警察が中間報告で発表したかというと、しておりません。この点でも、弟子屈署においてもまだまだ真相は明らかになっていないということです。
二点目。私の手元に、ある内部告発者の方が裏金帳簿を出してくれました。これはちょっと古いんです、どこの警察署かは本人との約束で言えません。これによりますと、副署長の領収印があります。これは中規模の警察署で、人件費を除いた警察予算が約四千万円、そのうち、約六百万円が裏金に回っていた。一五%です。人件費を除いた予算の一五%が裏金に回っていた。
これは中規模署ですから、五十人前後の小さな警察署です。これが百人、二百人、三百人規模の警察署では、一体、年間どのくらいのお金が裏金に回るのでしょうか。つまり、北海道においても、弟子屈と旭川中央署は明らかになっているけれども、まだまだほかにいっぱい警察署がある、疑惑を指摘されるべき警察署がいっぱいあるということです。これについては何も明らかになっていないということです。
もう一点言いたいと思います。
私の手元に、北海道警察本部会計課がつくった「新任副署長・次長研修資料」というものがあります。取扱注意と。
最初読んだとき、何だかよくわかりませんでした。普通の、会計は適正にやりなさいと指摘している文書のように思えました。しかし、そうであればなぜ取扱注意なのか、それがわからなかった。
中をいろいろ読み進むうちに、こういう記述があります。「捜査費を使用する捜査員の中には、その経理に疑問をもつ者もあり、これらの職員がときとして内部告発となって現れることが考えられることを常に念頭におく必要がある。」つまり、内部告発されることを常に念頭に置いて経理をしなさいと。これは、裏金をつくりなさいという指示書だと思います。つまり、裏金をつくるに当たって、新任の副署長、次長に対して、北海道警察本部会計課が、研修のための資料までつくっているということです。
そのほか、どういうものがあるかというと、会計職員として不適格と認められる者は英断をもって排除すると。
副署長というのは人事権を持っていないと私は理解しております。その副署長に対する研修で、会計職員として不適格である場合英断をもって排除する、つまり、排除しなさいと。疑問を持つような、正しく利用を考えるような会計職員は直ちに排除するように、英断をもって排除するように、こういう研修を行っているということであります。
時間がありません。これ以外にも、例えば、監査用のチェックリスト、こういうものを提出しなさいとか、チェックしなさいとか、あるいは問答集ですね、監査においてこういう指摘があったけれども、こうこうこういうふうに答えなさいというような資料も内部告発として私の手元に入っております。
このようなことを考えますと、依然真相は全くやみの中、解明されていないということです。ですから、真相が解明されていない以上、これからやらなければいけないし、やらない以上は警察の信頼は絶対に回復できないであろうと私は思っております。
以上です。(拍手)

by masayuki_100
| 2005-01-01 17:16
| |--元道警幹部らは語った