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ニュースの現場で考えること

「裏金の金庫番」だった元次長が語ったこと

元弟子屈署次長斎藤邦雄さんは、裏金づくりの実務を担当していました。
2004年3月1日。斎藤さんが札幌市の記者会見で配布した「私の主張」はこんな内容です。

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 道警の報償費不正疑惑について自分のやったことを正直に述べます。

 原田宏二さんの実名告白の後に高橋はるみ知事の「勇気を持って実名で話す人が出ることによって道民も私自身も一番知りたい事実が明らかになることを求めたい」との話がありました。悩み抜いた末、知事の発言も踏まえて市川弁護士と相談し、体験したありのままをお話しすることを決意しました。

 今後は、疑惑解明に向けて、北海道知事をはじめ、北海道監査委員の皆さま、北海道議会議員の皆さま、マスコミ関係の皆さまなどのご理解とご支援をお願いする次第です。道警現職の皆さんやOBの方々には、私に続いて真実を述べてくれる方々が出てくれることを望んでいます。

 【退職の経緯】

 私は二〇〇一年三月に釧路方面弟子屈署次長(退職前警部、退職時警視)で退職しました。定年まで七年間ありましたが、五十三歳で退職しました。今問題になっている裏金づくりにイヤ気がさし、「おまえはバカか。何のためにこんなことをしているんだ」と自問自答し、悩み続けた末の結論でした。当然、家族は猛反対でした。当時はそれなりの収入があり、沈黙を守りイヤイヤながら定年まで勤めれば良かったかもしれません。

 しかし、家族には「退職後の仕事が失敗して、収入が半減しても三分の一になっても、自分の生き方に正直でありたい」と説得して静かに道警を去りました。「悪魔の呪縛(じゅばく)」から解放され、安どの気持ちになったのも事実です。

 【告白するに至った経緯】

 道新に提供した資料は、私の手控えメモとして作成していたもので、公文書ではありません。

 疑惑のニュースは、強い関心を持って見守ってきました。そして今回の原田(宏二・元釧路方面本部長)証言でした。

 道警側の反応は予測したとおり「のらりくらり」。沈黙を守り、嵐が過ぎ去るのをこらえる組織にしか映りませんでした。この不誠実な対応に「道民をバカにしている。なめきっている」と怒りを抑えきれなくなったのです。道警が目標としている「道民の期待と信頼に応える強靱(きょうじん)な組織の確立」はどこへ行ったのか、と落胆の気持ちでいっぱいでした。加えて原田さんが孤軍奮闘する姿を見て、男として沈黙を守り通すことができませんでした。

 道警と対決する決意を固めて身辺整理し、これまでいた職場を先月退職し、無職となった今、道民の前に名乗り出て謝罪し、事実を告白することにしたのです。



 【裏金づくりの実態】

 私は、旭川方面本部地域課次席と弟子屈署次長の時に裏金づくりに関与したことがあります。

 <1>旭川方面本部地域課次席時代(一九九七年四月-二〇〇〇年三月)

 同課には捜査に使える報償費(道費)や捜査費(国費)はありませんでした。裏金原資は、部下に指示してやらせたカラ出張です。道庁のカラ出張問題のほとぼりがさめやらない時期と記憶しており、部下から「次席、ヤバイんじゃないですか」と警告されましたが、カラ出張の書類を作らせていました。記憶では三回くらい、金額で一回一万二千円くらいです。回数や金額は間違っているかもしれません。

 そのほか、地域課員の警ら作業手当と記憶していますが、当時はまだ(振り込みではなく)手払いだったため、ピンハネした現金を受領していました。記憶は定かでありませんが、着任前からピンハネ金額は決まっていたようで、毎月十日すぎ(?)に、庶務係長から五、六万円(?)を受領していたと思います。

 裏金は、運営費や自分を含めた幹部の交際費にしていました。金額は数万円だったと記憶しています。自分は二カ月ほど受領しましたが、自責の念にかられ、以後は受領しませんでした。

 その後、所属長(上司)の課長が交代して「次席、もうそんなことは止めれ」と言われ、その指示で幹部への交際費配分は止めました。しかし所属長から言われても、作業手当のピンハネだけは続けていたと記憶しています。課の運営費がゼロになるのと、全道の問題に波及するからでした。

 <2>弟子屈署次長時代(二〇〇〇年四月-二〇〇一年三月)

 (記者会見で)配布した資料の「ウラ金メモ」は、当時作成した裏金のメモの一部です。他の資料は、今後の手続きもありますので提出を差し控えさせてください。裏金づくりの実態はおおむね次の通りでした。

 (ア)会計課から動態表のコピーをもらいます。

 (イ)動態表とは、毎月の署員の動きを一覧表にしたもので、署長の動きを中心に署員の出張・当直など正規の事実が記載されています。そのすき間に、捜査員が報償費を(捜査協力者に)支出したように作り上げるのです。例えば、本当は事件書類を釧路の検察庁に公用車で送付に行っていれば、協力者と釧路市内で接触し、情報提供謝礼を交付したとして架空の報償費支出ができる。署長が本当の全道警察署長会議に出席していれば、支払精算書は「後閲」として決裁印を押せます。

 他の部署にいた時、どうしても動態表がうまく組み立てられない時は、(署員が)正規消化した年次休暇を取得しないで勤務したように(偽装して)休暇届の書類をボツにしたこともあります。

 (ウ)架空領収書

 署員の「地域・交通・会計係」に書いてもらったほか、会計係長に頼んで、他部署の知り合い(窓口は同じ会計係の人?)に郵送して偽造してもらったこともあり、逆に私がどこかの次長に頼まれて署員に書いてもらったこともあります。従って国費であれ道費であれ、どの領収書をだれが書いたかは絶対と言っていいほど解明できません。

 ただ、書いてくれる警察職員も腹立たしさがあってか、無意識か分かりませんが、先に押印だけしたものを渡すと、その印鑑の上に氏名をボールペン書きしてくるものがあり(日本人は署名の後に押印が一般的)、会計の予備監査でチェックされた記憶があります。

 (エ)支払精算報告書

 捜査員に直接書いてもらう(次長が赤ペンで下書きしたものを見ながら書いてもらう)のですが、弟子屈署では刑事係、生活安全係に書いてもらいました。交通係もあったかもしれません。

 (オ)印鑑

 偽造に使う印鑑は有り余るほどあり、自署の分のほか、他署の(偽造書類)にも使えます。印鑑が足りなくなればいくらでも他署に頼んで用意できます。

 (カ)報告書用の印鑑と印肉

 これは署長のもの、これは次長のもの、と印肉の濃淡にまで気を配りました。印肉スタンプを五個くらい用意し、書類に適宜自分で押印しました。捜査員の印鑑は会計係で全署員の印鑑を一括管理していたのでこれを使用していました。

 <3>警察庁、道警本部、方面本部会計課の関与

 会計検査院の場合、事前に予備監査、書類監査、本庁監査(ぶっつけ本番と同じく、所属長が警察庁職員に厳しく質問される)があって本番になります。

 道監査の場合、弟子屈署時代は二、三カ月に一回、釧路方面本部会計課員が(事前に)来署し、会計係長が対面審査や書面審査を受けていた記憶があります。書類チェックは予想以上に厳しく、間違っている個所にはどんどん付せんを張られ、修正に大変な労力と時間を使いました。
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by masayuki_100 | 2005-01-01 16:05 | |--元道警幹部らは語った