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ニュースの現場で考えること

ほうき星、1976年春

このところ毎晩、送別会が続いている。一晩に宴会が2つ、という日もあって、お誘いは本当に有難いと思う。で、ブログの更新も連日、こんな時間になる。

「こんな時間」ということで言えば、30年ほど前の「ほうき星」を思い出す。昨晩の夏至の話のときにも書いたのだけれど、私はかつて星が大好きで、本気で天文学者になりたいと思っていた。そんな時期に見たのが、ウエスト彗星という名の大彗星である。あれは、3月だった。郷里の南国・高知もまだまだ寒く、でも、途方も無い大彗星が接近しているという話を星好きの友人たちから聞き、私は興奮して夜もよく眠れなかった記憶がある。

その夜は、興奮して眠れなかったのに、明け方が近づいたとき、つい、うとうとしたのだと思う。目覚ましに気付かず、しかし、突然、ガバッと目覚め、布団から飛び出した。そして、窓に駆け寄る、、、、、たぶん私は、あんな夜明け前の空は、もう二度と目にすることが無いと思う。

空は少しだけ白み始めていた。二階の窓から身を乗り出すと、すぐ近所の蔵の屋根瓦はまだ黒い夜の中にある。その屋根瓦の向こうの空に、明るくサーチライトのような光が立ち上がっているのだ。彗星の、見事な尾である。頭の部分はまだ瓦屋根に隠れているのに、尾だけでも眩しいほどだった。

大急ぎで着替え、私は裏手の山を駆け上った。。。。そのときの様子を何と表現すればいいのだろうか。上で紹介したアストロアーツのページには、当時の様子が見事な写真で残されている。私は大げさでなく身震いした。黒色からブドウ色、白色から朱色へと、グラデーションのように色が変わっていく朝焼けの中に、白色とも金色とも付かぬ彗星が視界いっぱいに広がっていたのだ。裏手の山には写真機材も持って上がったのに、その日は、ほとんどシャッターを切ることも無く、ただただ荘厳な姿に見とれていた。

湖や大きな池のある場所に立ったとしよう。風の無い夜なら、月が水面に映る。暗い場所なら明けの明星や宵の明星も映る。北海道の東部の然別湖北岸は、風の無い新月の夜なら、天の川を湖面に映し出すという。。。ウエスト彗星も、近所の池に大きな姿を見事に映し出していた。空に、地に、彗星は長い尾を曳いていた。

今年の春は、6年ぶりくらいで、実家のある高知に帰省した。私の住んでいた家はそのままだが、二階から身を乗り出したときにウエスト彗星の頭を隠していた蔵は、もう、なくなっていた。確か、前回の帰省の際は、まだ堂々たる白壁があったのだが。あの大きな池も、あろうはずがなかった。

最近は空を見ることも、ほとんどなくなった。ずいぶん、遠くに来たな、と思う。
by masayuki_100 | 2005-06-22 03:49 | ■時計台(日記です)