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ニュースの現場で考えること

米海兵隊によるメディアの「選別」

旧聞に属するが、イラクへ派遣されていた米海兵隊が4月初旬、沖縄に戻ってきた。その一部はファルージャでの空爆にも参加していたらしい。かつてのベトナム戦争bかりではなく、イラク戦争でも、湾岸戦争でも、沖縄(=日本)は常に前線基地である。

ところで、その米海兵隊帰還の際の取材において、米軍側が日本のメディアを「選別」したことが、地元の沖縄二紙で報道されている。

<沖縄タイムス>「公正報道するメディア選別」/在沖海兵隊が回答
<琉球新報>基地内取材で海兵隊が県内2紙排除

上記の記事を元に、関連記事をたどっていけば主だった経過は分かるが、簡単に言えば、こういうことらしい。

ヘリ帰還を前にした3月末、米海兵隊報道部から共同通信、読売新聞、産経新聞、NHK、琉球放送(地元民放)の5社に基地内取材を認めるメールが入った。沖縄の2紙、沖縄テレビ、琉球朝日放送の地元メディア、それに沖縄に拠点を置く朝日、毎日、時事などはこのメールが来なかった。沖縄県庁記者クラブはこの「選別」を知り、5社以外の取材も認めるよう要請したが、実現せず。。。種々の報道によると、その後、いろいろなやり取りを経て、米軍側は最終的に以下のような内容の回答を寄せたのだという。

「メディアを選択した根拠は、報道機関の多様性、媒体の所在地、視聴者・部数の規模や範囲である。これらを考慮したうえで、われわれと強固でプロフェッショナルな関係を確立しており、公正でバランスの取れた報道を提供してきたと評価される報道機関を招待した」

権力によるメディア選別は、やや大仰に言えば、民主主義の自壊につながる。イラク戦争に限らず、世の中の出来事に対する意見、個人の思想信条などは実に多種多様である。報道統制などを通じて、そうした自由を制限したら世の中がどうなっていくかは、旧ソ連や旧東欧圏、いまの北朝鮮、中国などにおいて(もちろんかつての日本も)、十二分に目にしてきた。権力を持つ人々は自らにとって都合の良い情報は積極的に流し、都合の悪いものは隠す。その集積を通じて、「国益」などという言葉をまぶしながら、統治維持を図ろうとする。

多様な言論を通じ、異見を含めて議論を戦わせるからこそ、アメリカの民主主義は強いのではなかったか。おそらく、沖縄と同じ「メディア選別」を米国本土で行えば、大問題になったのではないかと想像する。上記の5社は(とくに現場の記者は)、米軍に「選ばれて」、何を感じたのだろうか。
by masayuki_100 | 2005-06-08 02:44 | ■ジャーナリズム一般