2005年 06月 07日
「あなた見られてます」
「監視と安全」でも少し紹介させてもらったのだが、北海道新聞の社会面で連載中の「あなた見られてます 監視と安全のはざまで」が先日、第2部まで紙面上で掲載を終えた。この連載自体は1ヶ月に一度くらいのペースで、今後もまだまだ続く予定なので、全部が終わった時点で、このブログにも私の言いたいことをドーンと書きたいと思っている。
ただ、いまボンヤリと思っていることを少し書き残しておくと、第一のそれは、「治安の悪化とは一体何か」ということである。
犯罪の認知件数が増えることが、治安の悪化なのだろうか? そうだとすると、一つ一つの事件の派手さ(というより派手な報道ぶり)よりも、もっともっと数字・統計の冷静な分析等が必要になる。警察問題に精通する小林道雄さんは常々、犯罪の認知件数や検挙件数は恣意的なものであり、これらの数字はいわば警察の「営業活動」の結果を示すものでしかない、という趣旨のことを述べている。また、辺境通信さんは昨年夏に『「外国人摘発増加」、だから何なのか』という記事を書かれ、その中で、こう指摘されている。
「04年1~6月に日本国内で刑法犯の疑いで検挙された人数は18万4945人で、そのうち来日外国人は2.31%を占めるに過ぎない。この数字は03年の同期に比べ0.05%減っている。93年から02年までの10年間の割合は、「コムスタカー外国人と共に生きる会」が調査・公表している(「メディアの辺境地帯」も引用)。それによると、10年間の割合は1.6~2.5%であり、04年1~6月もその範囲内に収まっている」
新聞社に身を置く立場からすれば、実にこたえる指摘である。「あなた見られてます」では、遅ればせながら、しかも不十分ながらではあるが、こうした「数字のからくり」にも触れた。そして、実際のところ、この種の「実は日本の治安はそんなに悪化していない」という指摘は、実は世の中には他にも多くある。ただ、多くの場合、そうした見解は「治安悪化」の大合唱の前で後景に退いてしまい、「じゃあ、あんたの家族はどうなってもいいんだな」式の言説が冷静な分析を飲み込んで行っているのではないか、と。警察庁と内閣府の調査によると、自分の住む地域の治安が悪化したと感じている国民は1割、しかし他地域の治安が悪化したと感じる国民は6割だという。そして、9割の国民はテレビや新聞で「治安悪化」を感じているというのだ。
今年の1月、「ヴィレッジという映画」というエントリで、治安悪化が言われる原因は報道にある、としてこう書いた。
「・・・かなり古い本(1986年)ですが、毎日新聞社発行の「戦後の重大事件早見表」という1冊があります。私はかなり気に入っていて、しばらくはよく、この本を眺めていました。たとえば、バラバラ殺人事件の欄には、各地のバラバラ殺人事件が、これでもかこれでもかと載っている、そんな本です。そういったページを眺めていると、昔の方が凶悪事件も猟奇的犯罪も多かったなあ、と感じます。。。最近は、新聞は1面で、テレビはトップニュースでこうした犯罪を報じることが多くなりました。でも、毎日の年表を見たり、その他の古い記事を読んだりしていると、どうしても昔の方がひどかったと思えてなりません。実際、警察の統計を丹念に読んでいると、「凶悪事件が増えている」というアナウンスには、「ほんまかいな?」と言葉を返したくなります。ならば、なにが変わったのか? それは全国区のメディアが登場し、そうした犯罪を全国ニュースとして報じるようになった、ということではないでしょうか。昭和30年代の九州の一家5人殺しを北海道新聞で探しても、実は掲載されていない、、、こんな例はいくらでもあります」
最近の事例でも、「監禁首輪男」の事件などを見ていると(事件そのものはひどいけれど)、これが本当に全国トップ級の事件だろうか、と大いなる疑問を持つ。それに、事件記者なら誰しもが分かっているとおり、捜査当局は事件の発表やリークのタイミング、その内容等については、実によく計算を尽くし、何かを図りながらそれを行っているのだ。
「治安悪化」という言葉に、ウブであってはいけない、マズイ、と強く思う。
以前のエントリただ、いまボンヤリと思っていることを少し書き残しておくと、第一のそれは、「治安の悪化とは一体何か」ということである。
犯罪の認知件数が増えることが、治安の悪化なのだろうか? そうだとすると、一つ一つの事件の派手さ(というより派手な報道ぶり)よりも、もっともっと数字・統計の冷静な分析等が必要になる。警察問題に精通する小林道雄さんは常々、犯罪の認知件数や検挙件数は恣意的なものであり、これらの数字はいわば警察の「営業活動」の結果を示すものでしかない、という趣旨のことを述べている。また、辺境通信さんは昨年夏に『「外国人摘発増加」、だから何なのか』という記事を書かれ、その中で、こう指摘されている。
「04年1~6月に日本国内で刑法犯の疑いで検挙された人数は18万4945人で、そのうち来日外国人は2.31%を占めるに過ぎない。この数字は03年の同期に比べ0.05%減っている。93年から02年までの10年間の割合は、「コムスタカー外国人と共に生きる会」が調査・公表している(「メディアの辺境地帯」も引用)。それによると、10年間の割合は1.6~2.5%であり、04年1~6月もその範囲内に収まっている」
新聞社に身を置く立場からすれば、実にこたえる指摘である。「あなた見られてます」では、遅ればせながら、しかも不十分ながらではあるが、こうした「数字のからくり」にも触れた。そして、実際のところ、この種の「実は日本の治安はそんなに悪化していない」という指摘は、実は世の中には他にも多くある。ただ、多くの場合、そうした見解は「治安悪化」の大合唱の前で後景に退いてしまい、「じゃあ、あんたの家族はどうなってもいいんだな」式の言説が冷静な分析を飲み込んで行っているのではないか、と。警察庁と内閣府の調査によると、自分の住む地域の治安が悪化したと感じている国民は1割、しかし他地域の治安が悪化したと感じる国民は6割だという。そして、9割の国民はテレビや新聞で「治安悪化」を感じているというのだ。
今年の1月、「ヴィレッジという映画」というエントリで、治安悪化が言われる原因は報道にある、としてこう書いた。
「・・・かなり古い本(1986年)ですが、毎日新聞社発行の「戦後の重大事件早見表」という1冊があります。私はかなり気に入っていて、しばらくはよく、この本を眺めていました。たとえば、バラバラ殺人事件の欄には、各地のバラバラ殺人事件が、これでもかこれでもかと載っている、そんな本です。そういったページを眺めていると、昔の方が凶悪事件も猟奇的犯罪も多かったなあ、と感じます。。。最近は、新聞は1面で、テレビはトップニュースでこうした犯罪を報じることが多くなりました。でも、毎日の年表を見たり、その他の古い記事を読んだりしていると、どうしても昔の方がひどかったと思えてなりません。実際、警察の統計を丹念に読んでいると、「凶悪事件が増えている」というアナウンスには、「ほんまかいな?」と言葉を返したくなります。ならば、なにが変わったのか? それは全国区のメディアが登場し、そうした犯罪を全国ニュースとして報じるようになった、ということではないでしょうか。昭和30年代の九州の一家5人殺しを北海道新聞で探しても、実は掲載されていない、、、こんな例はいくらでもあります」
最近の事例でも、「監禁首輪男」の事件などを見ていると(事件そのものはひどいけれど)、これが本当に全国トップ級の事件だろうか、と大いなる疑問を持つ。それに、事件記者なら誰しもが分かっているとおり、捜査当局は事件の発表やリークのタイミング、その内容等については、実によく計算を尽くし、何かを図りながらそれを行っているのだ。
「治安悪化」という言葉に、ウブであってはいけない、マズイ、と強く思う。
by masayuki_100
| 2005-06-07 02:51
| |--世の中全般