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ニュースの現場で考えること

不安が募る 憲法改正国民投票法案

過日、札幌弁護士会主催の「緊急シンポジウム 憲法改正国民投票法案と表現・報道の自由を考える」という催しがあり、パネラーの1人として参加した。パネラーは他にノンフィクション作家の吉岡忍さん、大阪弁護士会所属の弁護士笠松健一さん。吉岡さんは昔からの大ファンで、特に「墜落の夏」の迫力ある記述には、圧倒された思い出がある。笠松さんは弁護士らしく理論明晰、かつ大阪弁の語り口が親しみやすく、話がススーッと頭に入って行く。こういう方を話し上手というのだな、と思う。

法案の内容は、あちこちのブログ等に掲載されている。とくに情報流通促進計画さんのページは、コメントもたくさんついていて勉強になる。シンポの中で、弁護士の笠原さんは、逐条解説に近いスタイルをとって、法案の問題点を語ってくれた。その内容は、日本弁護士連合会の意見書とほぼ同じなので、ぜひ読んでほしいと思う。この法案に疑義を唱えている人々の考えは、細かい部分は別にして、大枠では、この意見書の考えとほぼ同じなのだろうと思う。

私自身は今のところ、「言論活動を制限する内容だ」という一点で、同法案に反対している。私は法律の専門家ではないので、どこかに勘違いがあるかもしれないが、法案を読めば読むほど、「こんな法律を成立させちゃいかん」という思いを強くする。最近では人権擁護法案が、言論を封殺する内容を含んでいるという点から大きな問題となったが、国民投票法案もそれと同じ、いや、それ以上の「表現の自由」「言論の自由」を封殺する要素を持っている。

今回の法案は、例えば、こう書いてある。

第六十八条 何人も、国民投票に関し、その結果を予想する投票の経過又は結果を公表してはならない。
第六十九条 新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌は、国民投票に関する報道及び評論において、虚偽の事項を記載し、又は事実をゆがめて記載する表現の自由を濫用して国民投票の公正を害してはならない。


この種の条文は、同法案のいたるところにある。違反すれば、いずれも刑事罰が待っている。一部マスメディアは「メディア規制条項」と言っているが、本質は「何人も」であり、新聞だけでなく「それに類する通信類」も対象である。さらに、独立行政法人の職員、教員らも意見を述べてはいけない、という趣旨が盛り込まれている。言うな、話すな、議論するな、違反すれば、刑罰だぞ、、、の連続なのだ。




法案をまとめた与党側は、「公選法にも同様の規定がある」と言っている。確かにその通りだが、上記六十九条に該当する公選法148条は、きちんと、「言論は自由。それが大原則ですよ」という趣旨のことをきちんと書いてある。国民投票法案には、それがない。そもそも、「新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ。)又は雑誌」のうち、「通信類」とは、何を指すのか? 法律は常に執行者側の裁量で運用されることを考えれば、たぶん、ネットやブログはアウトである。

しかし、私が言いたいのは、法案に関するこのような解釈論ではない。もう少し大枠の、「構造」みたいな話である。

そもそも、今回は憲法を改正したい人たちがいて、発議に向けて動いている。その人たちが、投票法案をつくっている。自分たちが発議した改正案に対して、「論評するな」というのは、いったいどういう発想なのか。「憲法××条を発議の通り変えたら、世の中はこうなる」「それをあなたはどう思いますか」といった言説は、すべて犯罪だ、、、そういう発想が法案には存在する。

人権擁護法案も言説を取り締まりの対象にする内容である。しかし、そこには(種々の問題はあるにしても)人権委員会がその主体となるといったクッションがあった。ところが、国民投票法案では、それらがない。つまり、言論活動の内容の是非を警察が直接、違反か否かを判断し、そして取り締まるのである。東京で立て続けに起きた「ビラまき事件」では、住居侵入など外形的な事実があり、それが逮捕容疑になった。ところが、同法案には、そのようなものは、どこを探しても無い。従って、「虚偽の事項を記載し、又は事実をゆがめて記載」したかどうかを最初に判断するのは、警察である。私の記憶では、戦後の日本で、表現内容そのものを警察が取り締まることを認めた法案は、これが最初である。

実際に逮捕・立件するかどうかは別にして、仮に法案が通れば、警察は、そうした言論を監視の対象にし、目を光らせるようになる。「この言論は投票法に違反しているかしてないか」を監視することが、警察の仕事になってしまうのだ。そのために予算も人員も手当てされるだろう。官僚組織の常として、投票が終わった後も、そうした増えた部分が元に戻ることもまた考えにくい。

この法案の異常性については、読売新聞が5月2日の社説で早速取り上げ、議論を封じるとは何事か、と主張した。そのほかにも、法案のひどさを指摘する声は、次第に広がっている。

「憲法改正に賛成か反対か」以前の話なのだ。私の受け止め方が違っている可能性もあるが、まずは、種々のサイトを覗いて、ぜひ、この法案について考えを巡らせてほしいと思っている。

<参考>
「21世紀の日本と憲法」内のページ
許すな憲法改悪・市民連絡会のページ
日本ペンクラブの声明
JANJANのリンクページ。ここから種々のサイトに行けます
by masayuki_100 | 2005-05-12 17:26 | |--憲法関連