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ニュースの現場で考えること

真の愛国者とは。「国家の罠」から

佐藤優氏の著作「国家の罠」(新潮社)を一気読みした。最近では稀な、実に凄みのある一冊。名著だと思う。

佐藤氏は鈴木宗男元衆院議員の側近だった外務省職員であり、鈴木氏のスキャンダルに絡んで刑事被告人となった人物である。私も東京勤務時代に一時外務省を担当し、佐藤氏とも若干の交流がった。(過去のエントリ 「北方領土が遠くなる」 参照)

この本を読むと、1999年から2000年代前半にかけて、日本は大きくカジを切ったことが分かる。「戦後日本の総決算」は中曽根内閣のキャッチフレーズだったが、中曽根氏が志向した日本の枠組みは、中曽根内閣時代には花開かず、ごく最近になって花開いた。また、規制緩和や産業の自由化をひときわ大きな声で叫んだのは、細川内閣だったが、その内容が現実になり始めたのは、森政権末期から小泉内閣になってからだと、私は思っている。

本書の中で、佐藤氏は、こういう時代の変化を「内政にあっては、新自由主義。外政にあっては、排外的ナショナリズムも包含した対米(追従)外交への傾斜」という趣旨で捉えている。この2つが高じたことで、鈴木宗男的な旧来の保守主義は、時代の邪魔者になったのだと。

不思議なことに、佐藤氏と全く立場の異なるはずのジャーナリスト斎藤貴男氏も、これと同様の見方をしている。3月下旬に、札幌で、私は斎藤貴男氏と飲む機会があったが、いまの世の中に対する斎藤氏の分析は、まさに、「内政にあっては、新自由主義。外政にあっては、排外的ナショナリズムも包含した対米(追従)外交への傾斜」である。

同時に、この本を読むと、「愛国主義」とは何か、どういう存在か、をつくづく考えさせられる。おそらく、最近、世の中に広がり始めた空気は、排外的ナショナリズムであって、愛国主義とは違う。。。明示的にこそ表現していないものの、佐藤氏はそう言いたかったはずだ。そして、過去において、悲惨な結末を招くことを繰り返したのは、他者を受け付けず、挑発し、内に向かってばかり高揚する排外主義ではなかったか。



以下はアマゾンの引用。

<出版社からのコメント>
 1991年ソ連消滅。エリツィン大統領の台頭から、その後の大混乱の時代を経て、プーチン氏への政権委譲へと続く90年代激動のロシアを縦横無尽に駆け回り、類い希な専門知識と豊富な人脈を駆使して、膨大な情報を日本政府にもたらした男、それが元主任分析官、佐藤優だ。

<カスタマーレビュー>
アメリカの虎の尾を踏んだ佐藤優, 2005/04/08
レビュアー: nasu5044 (プロフィールを見る)   東京都

 名著である。佐藤優氏は「国家の罠」によって失脚した。
彼に対する特捜の特捜の捜査についてはかねてから「国策捜査」であると報道されていた。この本を読んで分かることは、この「国策捜査」と言う言葉が「検察の側」から出たという事実である。田中角栄に始まって、検察の横暴によって、本来は無罪なのに訴追されたり、裁量権の濫用で普段なら立件しない事件が無理矢理立件されてきた。小室直樹博士がいうように、ロッキード捜査の時をもって、日本の司法は死んだのだ。
 この背景には、外務省内での親米ポチ保守派の権力(現在の谷池正太郎事務次官は親米代表格)掌握とい事情がある。鈴木宗男氏の「側近」でロシア派であった佐藤氏は、中国派であった、田中真紀子氏とともに政治的に葬られた。洪水のようになされたマスコミ報道で国民の神経をマヒさせてから。
 日本における最高権力は、官僚であり、特捜部と国税庁である。この二つは現在、アメリカの意を受けた日本政府の指示の元、堤義明氏などの経営者に襲いかかっている。この二つの官僚機構こそ「巨悪」である。伊藤栄樹検事総長の言葉は、検察にそっくりそのままお返ししたい。
佐藤氏に検察の横暴を耳打ちした、西村検事は現在左遷されてしまった。世の中は真実を言う人間は生き残れないように出来ている。

スパイ小説顔負けのノンシクション, 2005/04/04
レビュアー: カスタマー   東京
 以前“佐藤優”という元外交官のことを文藝春秋の記事で読み、衝撃を受けて以来、彼の告白が出るのを待ち望んでいた。その記事の中の、あるエピソードを紹介したい。
 ……ソ連崩壊前後、ロシア各地で軍隊と民衆が衝突。そのどれもが流血無しでは収まらなかったのに、たった一箇所、ギリギリまで対峙しながら、軍隊が銃口を下ろし、民衆との和解が成立した地域があった。その影にいたのが、佐藤優だった。偶然かの地に居合わせた佐藤は、日本の外交官という中立の立場を利用し、軍隊と暴徒化寸前の民衆の両陣営を行き来しながら、粘り強く説得を続け、ついには和解にまでこぎつけてしまう……。
 その無私の態度と優れた能力は、ロシア人から高く評価され、ロシアの中で最も信頼される西側の外交官の一人となる。優秀な日本外務省役人の中からまで「10年に1度の人材」との賞賛が沸き起こったほどだった。
 その佐藤が2000年までの日露平和条約の締結を目指し、鈴木宗男とタッグを組み、両国の和平に尽力しながらも、夢破れ、やがて個人ではどうしようもない政局のうねりの中に巻き込まれる様が、この「国家の罠」の中で述べられている。徒手空拳で己の力を信じ、この社会に立ち向かわんとする全ての人は、この本から、何者にも負けない勇気を得ることができるだろう。

his silent warとアメリカの影そして”死者の家”, 2005/04/03
レビュアー: recluse (プロフィールを見る)   千葉県 Japan
 日本の情報関係者によるこのような回顧録は珍しいです。海外にはいくつもの例がありますが、ほとんどが当局の検閲を受けたsanitised version です。その中身の迫真さとディテールについてはその中身を読んでください。1989-1991年の”機会の窓”を逃してしまった日本外交が追求した地政学的な戦略が敗北していく姿が描写されています。そしてその後の日本の国内デザインの機軸の変化とゲームのルールが変わる中で、この外交路線の敗北が引き起こした国内での波及が著者に及ぼした不幸が描かれます。この関係では、”金融崩壊・日本の呪縛 「しし神」のいない金融の森”との併読が参考となります。金融といい外交といいその秘所を決して公にはさらすことのできない部分へ検察と司法という光がさらされていくわけです。著者も述べているように、”対象はよくわからないが、何かに対して怒っている人々”(387ページ)の世論に追従することが、本当に正しいことなのでしょうか?そしてこれらのプロセスの背後に見え隠れるのは、いつもアメリカの影です。これには著者は直接には指摘しませんが、親米路線に統一された外務省の”きれいな水槽”との比喩は慧眼です。読後感は限りなく重い作品です。

国家の罠を読んで, 2005/04/03
レビュアー: 内山秀俊   宮崎県 Japan
「国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて」を理不尽な思いで読んだ。なぜ国益を考えハードな仕事をこなしていた有能な外交官が逮捕され有罪になるんだ?田中、鈴木、小泉の政争に巻き込まれ、外務省から、鈴木、佐藤両氏が排除されたという構図になるが、そこに至るまでに、外務省、官邸からのリークによって鈴木、佐藤両氏がワルだとと言う世論が形成された。私自身もテレビや新聞に洗脳され両氏をワルだと思い込んでいた。この本を読んで自分を恥じている。国策捜査という恐ろしい現実があることもはじめて知った。
 たたき上げだが、非常にやり手で有能な鈴木代議士、キャリア外交官の能力を超えて優秀な佐藤優氏のコンビをリークによってつぶした人達が、両氏の失脚が、本当に国益にかなうと正解を得ているのならいいのだが、実は、鈴木、佐藤氏の偉大な業績を正当に評価する能力がなく、ただの嫉妬や妬みで、両氏の失脚を画策したのなら、罪は重い。
 外務省に見捨てられ、力を持たない佐藤氏の唯一の抵抗は、26年後に情報公開される外交資料と整合性をもたせる法廷闘争だ。佐藤優氏の正義を信じてこの勇気ある闘いを見守りたい。
 この本には、権力の罠に抵抗する氏の主張意外にも、ロシア人、ユダヤ人との交流話や、佐藤氏の接した人物の評価など面白い記述もある。今の日本が排外主義的ナショナリズムに傾向しているのではとか、とても勉強になった。
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by masayuki_100 | 2005-04-09 16:25 | ■本