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ニュースの現場で考えること

ヤミのカネの授受の場が、どうして「喫茶室」なのか。

民主党の小沢一郎幹事長に関する資金「疑惑」で、たびたび三重県の「水谷建設」が登場する。水谷建設は、福島県の佐藤栄佐久・元知事の収賄事件の際、贈賄側としても登場する。この種の事件においては、何やら常連となった感じすらあるが、「水谷建設」の名は私個人としても忘れがたかくある。今から10年以上も前のことだが、1997年5月の北海道新聞1面にこんな記事が掲載されている。東京新聞などの友好紙にも原稿は送られ、結構、大きく扱われた記憶がある。記事は、こんなふうだ。(解りにくい部分や個人名は省略・修正するなどした。従って原文と同じではない)

<忠別ダム用地買収解決資金*旭川開建、6億円出させる*受注・大成建設の下請けに*入札直前*談合認め要請か>
 二〇〇三年の完成を目指して、国が建設中の石狩川水系・忠別ダム(上川管内美瑛町ほか)で、旭川開発建設部(国の出先機関)が一九九四年、水没予定地の買収をめぐるトラブルを解決するため、ダムの本体工事を受注した大手ゼネコンの大成建設(本社・東京)を通じ、下請け企業に六億円もの巨額資金を提供させていたことが、北海道新聞社の調べで分かった。旭川開建から大成建設への資金要請は、ダム本体工事の入札前に行われ、大成建設側は落札後、六億円を支払っていた。複数の関係者は「大成建設の落札は業界の談合で早くから決まっていた」と証言しており、旭川開建が談合を容認したうえで、資金の要請をした疑いが強まっている。

 旭川開建の当時の担当者らによると、本体工事の入札が九三年度内と決まった際、水没予定地には土地計一・三ヘクタールが未買収で残っていた。その用地所有者と開建は八九年に売買契約を結んだが、所有者が新たな補償を要求するなど、土地名義が変更されないままトラブルが続出。本体工事の入札を直前に控えた段階で、開建側の用地買収予算は二千数百万円しか残っていなかった。
 しかも、「すべての解決にはさらに三億円以上必要」(同開建関係者)という苦しい状況に追い込まれていた。
 このため、開建側は九三年十一月ごろ、「用地問題が解決できない。必要な金は後でゼネコンに出させる。すべて任せるので解決してほしい」などと、道内のあるブローカーに解決を依頼。ブローカーは翌九四年二月、自ら用意した三億数千万円を使い、水没予定地を買収し、その後、土地を国(建設省)に転売(名義変更)した。その価格は、同開建の予算残額に相当する二千数百万円だったとされる。

 この記事はまだ続きがあり、社会面にも関連記事がある。さらに、翌日以降も報道は続いた。それらの報道によると、こういうことだ。

 要するに、土地買収のトラブルの解決を国がブローカーに頼み、ブローカーは売却を渋る地主から3億数千万円で土地を買い、さらに2千数百万円で土地を国に売った。長くなるので上記では引用していないが、このブローカーへの支払いが「3億数千万円の経費込みで6億円」なのである。
 そんな6億円ものカネを国が用意できるはずがない。そこで国は、談合で落札が決まっていた大成側にかねをつくってくれ、と頼む。大成は、一時下請けに入ることが決まっていた水谷建設に「カネを用意してくれ」と頼む。で、水谷はそれを用意し、ある日、このカネの受け渡しが行われた、という流れだ。

 記事によると、大成建設の当時の営業責任者は「水谷建設が六億円を払った事実は事後、私が水谷建設から確認したが、水谷建設が自発的にやったこと。理由は分からない。大成は全く関係ない」と言った。当時の国側の幹部は「(国の)組織でもないあなた方(記者)に話すことは何もない。男には死んでも言えないことがある」と言った。さらに、開発局官房用地課は「指摘されるような事実はない。調べてはいないが、ないものはない」と言い……。
 おどろおどろしいが、簡単に言えば、そういう流れである。

 で、何が言いたかったのかと言えば、カネの受け渡しである。一連の取材は当時、私と後輩とでやったのでよく覚えているが、カネの受け渡しが行われたのは、札幌の有名ホテルのスイート・ルームであり、そのことは記事にも書いた。ヤミのカネとは、だいたい、そういった人の目に付かぬ場所で行われるものだ。

 ところで、一連の小沢氏の資金疑惑では、水谷建設幹部は、東京の全日空ホテルの「喫茶室」でカネを渡したことになっている。少し前の当ブログのエントリ「事件報道自体の量的抑制が必要だ」において、あんな人目に付く場所でヤミのカネの授受をするだろうか、と私は書いた。それは、あのホテルの喫茶室の様子を知っているから浮かんだ当然の疑問でもあるが、もう一つの理由もある。それは、水谷建設側も参加したとされる札幌でのカネの授受の場が、ちゃんと「スイート・ルーム」に設定されていた、ということだ。

 確かに、動いたカネに金額の差はある。片方は6億円、片方は5000万円。しかし、こうしたヤミのカネは、当たり前の話だが、菓子の手土産のように、突然渡されるモノではあるまい。事前に、少なくとも、暗黙の了解程度のものがあるからこそ、受け渡しは成り立つ。
 そういう場合、ふつう、政治家の秘書なら、オープンな場である全日空ホテルの喫茶室など、嫌うのではないか。他の政治家が来るかもしれない、政敵の秘書が来るかもしれない、マスコミもいるかもしれない、警察から天下ったホテルのマネージャーが見ているかもしれない、、、水谷建設は、2004年よりも相当前から、種々ウワサのあった会社らしいから、その程度の警戒心は抱いて当然である。

 小沢氏疑惑では種々、山のような情報が流れている。私は直接何も取材していないから、単なる感想程度の話でしかないが、「なぜ授受の場が喫茶店か」がどうしても引っ掛かる。札幌では、政治家やその秘書がいたわけでもないのに、「スイート・ルーム」なのだ。何千万円ものカネを動かす会社が、ホテルの客室代金をけちるとは、とても思えない。
 これは空想だが、水谷建設やその関係者による宿泊・利用の記録が全日空ホテルに存在していないのではないか。だから、「喫茶店」で授受があったというストーリーになっているのではないか、と感じている。
by masayuki_100 | 2010-02-02 04:18 | 東京にて 2009