2009年 09月 09日
映画「ポチの告白」を見て。
映画「ポチの告白」を見た。知人の寺澤有さんが原案をつくり、いま現在は札幌と福岡で上映されている。
警察関連の映画と言えば、だいたいが「踊る大捜査線」のような、カッコイイ警察が描かれている。たまにワル警察官が主人公であっても、そのワルは組織からはみ出したという意味のワルであって、「ワルだけど正義漢」のことが多い。その点、「ポチの告白」は、警察組織の腐敗を真正面から取り上げた、日本では希有な映画である。エンタテイメントとしても十分に楽しめると、私は思った。
上映の後、同じく京都に来ていた高橋玄監督と飲みながら話をしたところ、彼は「自分はいわゆる警察問題には関心がなかった。組織と個人の関係を描きたかった」と繰り返し語っていた。個人はいかにポチになるのか、なぜポチなのか、飼い主は誰なのか、という視点である。
組織と個人の関係からすれば、多くの会社員・組織人は、その組織の一員としてメシを食っている、つまりは、プロはプロであるという1点において、すでに「ポチ」の要素を十全に備えている。日本経済新聞社の上層部の腐敗を組織に身を置きつつ告発し、全力で闘った大塚将司さんにしても「日経新聞の黒い霧」(講談社)などを読むと、自身はいかにしてポチになっていたか(そういう言葉遣いではないが)を告白している。それほどまでに、組織の呪縛はすさまじい。
もっとも、「ポチの告白」の結論は、「飼い主は組織ですよ、上司ですよ」とはなっていない。自分の首輪につながれた、紐。それをだれが握っているのか、そこは映画を見てのお楽しみ、である。
ストーリーの主要な場面ではないが、私自身が「おお」と思いながら、思わず笑ってしまったのは、こんな場面だった。
警察腐敗を追及する地元紙の若い写真記者が、警察は煙たくて仕方がない。彼は警察担当記者でもないのに、警察発表を疑い、デスクの言うことも聞かず、警察の組織的不正の実態に迫ろうとする。その最中、警察担当記者が、彼の行動を警察幹部にチクるのである、、、
・・・雑然とする新聞社の編集局。警察腐敗の追及を迫る若い写真記者。「事件がメシのタネだ。警察は不正を発表したのか? 警察相手にそんなことができるか」みたいなことを言いながら(正確なセリフは忘れた)若い記者を突き放すデスク。そして、その様子を見ていた警察記者クラブ詰めのサツ回り記者は、早速、編集局大部屋の片隅に向かった。携帯電話を取り出し、警察幹部にその様子を伝える、つまり「ご注進」に及ぶのである・・・。
長く報道業界にいる記者なら、似たような場面は一度ならず見聞きした経験があるのではないか。実際にそんな場面に遭遇したら、ただではおかんぞ、というところだが、こうやって映画の一場面として見ていると、笑える。滑稽というほかはない。記者として、これ以上の無様な姿はあるまいし、自分の子供にそんな姿は見せられまい。しかも、映画の中のチクり記者は、その姿や動作が、いかにも「ポチ」っぽくて、本当に映画監督はすごいなあ、と思ったのである。
少し前のことだが、京都へ足を運び、見たい見たいと思いつつ、なかなかその機会がなかった警察関連の映画と言えば、だいたいが「踊る大捜査線」のような、カッコイイ警察が描かれている。たまにワル警察官が主人公であっても、そのワルは組織からはみ出したという意味のワルであって、「ワルだけど正義漢」のことが多い。その点、「ポチの告白」は、警察組織の腐敗を真正面から取り上げた、日本では希有な映画である。エンタテイメントとしても十分に楽しめると、私は思った。
上映の後、同じく京都に来ていた高橋玄監督と飲みながら話をしたところ、彼は「自分はいわゆる警察問題には関心がなかった。組織と個人の関係を描きたかった」と繰り返し語っていた。個人はいかにポチになるのか、なぜポチなのか、飼い主は誰なのか、という視点である。
組織と個人の関係からすれば、多くの会社員・組織人は、その組織の一員としてメシを食っている、つまりは、プロはプロであるという1点において、すでに「ポチ」の要素を十全に備えている。日本経済新聞社の上層部の腐敗を組織に身を置きつつ告発し、全力で闘った大塚将司さんにしても「日経新聞の黒い霧」(講談社)などを読むと、自身はいかにしてポチになっていたか(そういう言葉遣いではないが)を告白している。それほどまでに、組織の呪縛はすさまじい。
もっとも、「ポチの告白」の結論は、「飼い主は組織ですよ、上司ですよ」とはなっていない。自分の首輪につながれた、紐。それをだれが握っているのか、そこは映画を見てのお楽しみ、である。
ストーリーの主要な場面ではないが、私自身が「おお」と思いながら、思わず笑ってしまったのは、こんな場面だった。
警察腐敗を追及する地元紙の若い写真記者が、警察は煙たくて仕方がない。彼は警察担当記者でもないのに、警察発表を疑い、デスクの言うことも聞かず、警察の組織的不正の実態に迫ろうとする。その最中、警察担当記者が、彼の行動を警察幹部にチクるのである、、、
・・・雑然とする新聞社の編集局。警察腐敗の追及を迫る若い写真記者。「事件がメシのタネだ。警察は不正を発表したのか? 警察相手にそんなことができるか」みたいなことを言いながら(正確なセリフは忘れた)若い記者を突き放すデスク。そして、その様子を見ていた警察記者クラブ詰めのサツ回り記者は、早速、編集局大部屋の片隅に向かった。携帯電話を取り出し、警察幹部にその様子を伝える、つまり「ご注進」に及ぶのである・・・。
長く報道業界にいる記者なら、似たような場面は一度ならず見聞きした経験があるのではないか。実際にそんな場面に遭遇したら、ただではおかんぞ、というところだが、こうやって映画の一場面として見ていると、笑える。滑稽というほかはない。記者として、これ以上の無様な姿はあるまいし、自分の子供にそんな姿は見せられまい。しかも、映画の中のチクり記者は、その姿や動作が、いかにも「ポチ」っぽくて、本当に映画監督はすごいなあ、と思ったのである。
by masayuki_100
| 2009-09-09 13:31
| 東京にて 2009