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ニュースの現場で考えること

「検閲国家」の打破には、まずは政権交代だ



昨年の秋、日本で見過ごすことの出来ぬやり取りがあった。当時はロンドンに駐在していたこともあって、恥ずかしながら、問題の深刻さを明確に認識できたのは、数カ月前のことである。

自民党が各省庁に対し、すなわち霞ヶ関全体に対し、民主党から資料提出の要求があった場合、事前に自民党側にそれを知らせよ、と指示し、実行させていた、という問題である。「日本は検閲国家か!」と、相当の怒りと批判を浴びた出来事だから、記憶している方も多いと思う。保坂伸人議員のブログ、<どこどこ日記>の記事、<麻生総理は「事前検閲」に違和感なし>などを読めば、ことの経緯はだいたい分かる。

問題はこれだけではない。マスコミが各省庁に取材をかけ、資料を要求した場合などにも、同様の対応が行われていた事実がある、というのだ。これを直接、政府側が認めたのは、昨年10月6日の衆院予算委員会のやり取りだったらしい。「らしい」としか言えないのは、その当日の衆院議事録が、国会の議事録検索で引っ掛かってこないからである。仕方なく、これに言及したHPなどを探すと、こんなやり取りだったらしい。

民主党・長妻昭議員 「われわれ野党だけではなくて、マスコミも独自に資料請求するケースがあると思いますが、 そういうケースに関しても、やっぱり事前に自民党国対にお知らせすると、 こういうようなことでございますか?」
厚生労働省 大谷泰夫官房長  「事前に与党にお知らせするということはございます」

長妻議員はこれに関連し、「要求資料が(省庁と)自民党の相談でもみ消されていれば、戦時中の検閲みたいな話にもなりかねない」と痛烈に批判したようだ。当時、多くの人たちが「事前検閲だ!」と騒いだのも、当然である。これはよくよく考えれば、いや、よくよく考えなくても、実に恐ろしいことだ。

(それにしても、この当該の議事録が「国会会議録検索システム」に載っていないのは、いったい、どういうことだろうか。みなさんも試してみればいい。対象は「第170回国会 衆院 予算委員会」である。予算委が開会した日、すなわち9月29日の議事録は「第1号」として、ちゃんと載っている。「第2号」は、10月2日。「第4号」は10月7日で、このあと、12月24日の「第7号」まで続く。上記の長妻議員と大谷官房長の質疑は、10月6日である。そして、その10月6日の「第3号」だけが、載っていないのだ! きょうは土曜日で衆院事務局もお休みだから聞くこともできないが、しかし、これはいったいどうしたことか)

こういう「事前検閲」的な一事をみても、政権交代しかないと思う。霞ヶ関の官僚たちは、あまりにも長年、「自民党」に奉仕しすぎた。だからこそ、まるで「賄賂の後払い」のような天下りも、システムとして平然と温存できた。自民党と霞ヶ関は、あまりにも長期間、法と税金の力で集めた情報を独占し、思うように使ってきた。最近、とみに暴走している警察・検察にしても、仮に、政権交代が頻繁に起きる国であったならば、あそこまで露骨な動きはできなかったはずだ。裁判所の超保守的体質も、またしかり、である。

世の中の悪いこと全てが政治のせいであるはずはないが、世の中の種々の矛盾の根幹は、この長期政権が生み出したことは間違いない。私がたびたび問題にしている記者クラブ制度にしても、政権交代が実現すれば、そこから崩れて行く可能性が大である。

終戦直後の一時期や細川政権時代、或いは連立時代といった例外はあるけれども、だいたいにおいて、こんなにも長く、一政党が政権に座り続けた国は、主要国ではほとんどない。長期政権が腐臭を放つのは、いつの時代も、世の東西を問わず、同じである。
by masayuki_100 | 2009-05-30 14:48 | 東京にて 2009