2009年 05月 28日
「敵基地攻撃論」に関して
最近の報道は、こんな感じだった。
<産経新聞>
自民党は26日の国防部会防衛政策検討小委員会で、年末の防衛計画大綱改定に向けた提言案の要旨を大筋で了承した。提言案は北朝鮮による弾道ミサイル発射を受け、海上発射型巡航ミサイルなど敵基地攻撃能力の保有を明記。核実験の監視・情報収集能力の強化も盛り込んだ。
<朝日新聞>
麻生首相は26日、北朝鮮の核実験を受け、自民党内から自衛隊が敵基地攻撃能力を持つ必要があるとの意見が出ていることについて、「一定の枠組みを決めた上で法理上は(敵基地攻撃は)できる。攻撃できることは、昭和30年代からそういった話だと承知をしている」と述べ、法的には可能との見方を示した。首相官邸で記者団に語った。
敵基地攻撃能力をめぐっては、政府は他国を攻撃する兵器の保有自体を認めてこなかった経緯がある。
こうした言動は、きちんと報じなければならい。ただし、「事実をたんたんと書く」「要人の発言をそのまま、いわば客観的に書く」というだけでは、これは、情報のタレ流しである。情報のたれ流しは、既成事実の追認と紙一重であり、既成事実化に手を貸すことにも繋がりかねない。
こうした流れを防ぐには、これも当たり前すぎるほど当たり前の話だが、記者側が種々の機会を捉えて、どんどん質問をぶつけるしかない。それも、「反問」を、である。
・敵基地を先制攻撃すると言うが、民間人(非戦闘員)に被害が出る恐れはないのか。
・民間人に被害が出たら、どうするのか。
・敵基地攻撃論は、日本が自ら戦争の端緒を切ることになるが、それで良いのか。
・数多の戦争のほとんどは、「自衛」「自国・自国民の防衛」の名のもとで始まったが、それと敵基地攻撃論はどこが違うのか。
・敵基地攻撃の「能力を保有する」ということは、先制攻撃を行う意志があるということになる。それで良いか。
・憲法は武力による紛争解決を禁じている。敵基地攻撃論は憲法違反ではないか。
・法律上は敵基地を攻撃できるとの法的根拠はどこにあるのか。
・北朝鮮に対して戦争を仕掛けた場合、中国やロシアを硬化させ、両国との緊張が極度に高まる可能性がある。それを覚悟のうえで、先制攻撃論を唱えているのか。
・ロシアを敵に回してまで、攻撃を仕掛けるのか。
・中国を敵に回してまで、攻撃を仕掛けるのか。
・朝鮮半島でいったん戦端が開かれれば、韓国を巻き込んで重大な事態が生じる恐れがある。それでも先制攻撃を行うのか。
・先制攻撃を行う場合、事前に、米国に通報するのか。
・米国がそれを了承すると、本当に思うのか。
・日本が戦端を開いた場合、米国が本当に、軍事的に日本をバックアップすると思うのか。
・場合によっては、米国は静観を決め込み、アジア人同士が戦う(戦わせられる)恐れも十分あるが、それをどう考えているのか。
・先制攻撃の場合、韓国には事前通報するのか。
・韓国がそれを本当に支持すると思うか。
・敵基地攻撃を仕掛けた場合、韓国の対日感情が最悪になり、緊張が極度に高まる可能性が十分ある。それをどう判断するのか。
・先制攻撃によって朝鮮半島に動乱を招いた場合、その混乱の責任は日本が背負う。その覚悟があるのか。
・仮に北朝鮮や朝鮮半島で動乱が起きた場合、その後の統治はだれがどう責任をおくのか。
・先制攻撃を行った場合、北朝鮮と日本は交戦状態となり、日本国内でのテロを頻発させ、治安状況を極度に悪化させる恐れがある。それをどう判断するのか。
・先制攻撃によって、韓国や中国での反日感情が極度に悪化した場合、両国に進出している日本企業・その従業員の安全をどう確保するのか。
・先制攻撃の際、自衛隊員に死傷者が出たら、兵士を死なせた責任はだれがどう取るのか。
・だれがその覚悟を持っているのか。
・先制攻撃によって、日本が国際社会の批判を真っ向から受けた場合、日本はどうするのか。いつぞやの場合と同様、「さらば国連」の覚悟で事を進めるのか。
とまあ、挙げれば切りがないが、すべての取材がそうであるように、相手がだれであれ、取材は「質問」こそが命なのだ。「反問」こそが命なのだ。
by masayuki_100
| 2009-05-28 02:21
| 東京にて 2009