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ニュースの現場で考えること

講談社 [IN・POCKET 2004年8月号]

「日々、真面目に」の落とし穴」

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 旧北海道拓殖銀行が経営破綻してから数年後、元中堅幹部と東京で会ったことがある。彼は1997年11月の破綻前に銀行を去り、その後、東京の名もなき不動産会社に再就職していた。
「真面目に真面目に仕事してたんだよ、拓銀時代は。組織全体がおかしくなっていく感覚は確かにあった。でも、目の前にある日々の仕事の内容が劇的に変わるわけじゃない。そしてね、あーって気付いたら、もうどうしようもなかった。破綻寸前に逃げ出せて、幸せだったとは思うけどね」
 彼は、そんなことを語った。
 内部にいる者にとって、自分の所属する組織の「異常性」はなかなか自覚できないのだ。大組織であればあるほど、職務は細分化されているから、自分の仕事を真面目にこなしていれば、それなりに時間は過ぎていく。
 一連の裏金疑惑で針のむしろに座っている北海道警察も、たぶん、一人一人の中堅幹部はそんな感覚を抱いているのではないかと思う。矢面に立たされているのは、本部長や総務部長、警務部長ら上層部だけ。その上層部が北海道議会や報道を前に右往左往する姿を見て、道警本部に机を構える多くの中堅幹部は何を思ったのだろう。
 組織はトップが動かすが、各部署で陣頭指揮をとる中堅幹部が「日々、真面目に」だけを念頭に過ごしていたら、その組織は緩慢な死に向かうだけである。
 拓銀は私企業だったし、道警は捜査機関だ。おぼっちゃん体質が抜けきらなかった拓銀、上意下達が絶対の階級組織である道警。双方は何から何まで違う。それでも、いまの道警をみていると、破綻前の拓銀に似ているように感じるのは、気のせいだろうか。
 一連の疑惑追及の最中、読者から「真面目に働いていたということで、すべては許されるのだろうか。例えば、あの雪印だって、社員一人一人は真面目に働いていたに決まっている」という便りをいただいた。
 北海道新聞取材班による講談社文庫は、『解明・拓銀を潰した「戦犯」』、『検証・「雪印」崩壊――その時、何がおこったか』についで3冊目になる。
 自分が勤務する新聞社はどうか――。そんなことも頭に浮かべながら、本書では「組織」のありようも問うたつもりである。


高田昌幸(北海道新聞社 編集局 報道本部次長)


<以上は、『追及・北海道警「裏金」疑惑』 北海道新聞取材班著 の紹介ページから引用>
by masayuki_100 | 2004-08-10 03:27 | ■本