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ニュースの現場で考えること

ガ島通信さんの「さよなら新聞」

彼とは一度しか会ったことがない。それでも、ススキノで数時間、杯を重ね、その後も何度かメールのやり取りをする中で、ずいぶんと近しい感じを持ち、同時に、こういうことがあるかもしれない、それもそう遠くないうちに、とぼんやり考えていた。

ガ島通信さんのことである。

私がまたも風邪で伏せっていた間、3月4日午後4時に、ブログ上で「さよなら新聞」というエントリをされ、退社宣言を出してしまったのである。そのエントリを「ひまネタ」に分類しているところが、いかにも彼らしい。

彼の人物像は、おそらく多くの人が感じられている通り、である。すなわち、ブログ「ガ島通信」の多くの書き込み、とりわけコメント欄での反応に見られるように、言葉も姿勢もまっすぐで、言いたいことを相手によって変えるようなこともせず、質問にはすべて真摯に答えようとする。ありのままの自分をさらけ出そうとし、そのために自分自身を信頼しようとし、周囲から自信過剰と言われてもその姿勢を変えない。その半面、人一倍の寂しがり屋で、繊細で、どこか子供っぽくて。見かけも中身もかっこいい。。。ざっと言えば、そんな印象を受けた。

退社を決断するまでに、どんなことがあったのかは分からない。彼の勤務先の「社風」については、種々仄聞するところはあるけれど、それとこれとが、どういう関係なのかも分からない。

ただ、私がこのブログを始めるに当たって書いたこと、すなわち「真面目な記者であればあるほど、既存メディアへの絶望感を深めていく。報道の現場は最近、そんな感じがますます強まっています。この閉塞感はいったい何なのか?・・・」という状況は、ガ島通信さんも同じように、いや私以上に感じていたに違いない。そして、たぶん、そうした大状況がきっと、今回の決断につながっていたのだろう。

私はこれまでにも、会社を去る多くの同僚を見送ってきた。他社の仲間にも、この世界から足を洗った人がいる。「こいつともっと一緒に仕事したい」という人に限って、足早に去っていく。そんな感じがしてならない。そして、何かの折に今でも酒を飲みつつ、「辞めたいな」という話を互いにする相手は、「こいつとは一緒に・・・」という記者ばかりなのだ。

ガ島通信さん、はっきり言って、うらやましいよ。「逃げるなよ。ずるいぞ」と言いたい気持ちも少しあるけれど、うらやましい。本当にそう思う。これから先、どういう道を進むにしても、応援したい。頑張れよ。

(追記)
このエントリを書いて登録した直後、ガ島さんに電話した。
「もしもし、札幌の高田です」
「うわ、声、ひどいですね。具合、大丈夫ですか?」(こんなときに人の心配しなくていいよぉ)
「大丈夫、大丈夫。で、どう?」
「なんか、驚いています。こんなにたくさん、TBやコメントがあって。あのエントリを書く前は2日間、ぐっすり眠れたんですが、その後は逆に眠れなくなって。。。自分はそんなにすごいことしていたのかなあ、と考えて」
ガ島さんの声は、心なしか、以前より明るく、元気に感じた。再就職先は焦らず、のんびり考えたい、、、そんなことを語る口調はやはり、肩の荷が下りたようにも感じられた。

「R30さんの言うように今後のことは幅を広げて考えます」とガ島さん。

でもさ、君の勤務先の幹部がどう思っているかは別にして、この業界から君のような人がいなくなることは、何と言うか、大きな損失だと思っている人もまだ少しは居ると思う。少なくとも私はそう感じている。勤務先はどこでもいいから、今後のことを考えるときには、この業界(新聞業界ではなく、ものごとを取材して伝える業界という意味です)を除外しないでほしい、と思うよ。
ガ島通信さんの「さよなら新聞」_c0010784_1748527.gif
by masayuki_100 | 2005-03-05 12:31 | |--世の中全般