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ニュースの現場で考えること

B型肝炎訴訟 長すぎる裁判は単なる残務処理

B型肝炎訴訟で、「予防接種で感染した」ことが最高裁で認定され、大法廷は国に賠償命じた、というニュースが流れている。ロンドンからはネットで見ただけなので、各紙の紙面での大きさ等は、良く分からない。でも、そこそこの大ニュースになっているはずだ。私の関心は、その判決の内容ではなく、この裁判の「長さ」にある。

この訴訟が最初に起こされたのは、確か、1989年だったと思う。場所は札幌地裁である。私は北海道新聞で駆け出し記者をやっていたが、その提訴時の記憶はない。その数年後、札幌で司法担当記者になった。

記憶では、各回の弁論は一番大きな法廷で行われていたと思う。弁論は2ヶ月か3ヶ月に1回のペース。傍聴席は比較的空いていた。夏の暑い日など、ひんやりした傍聴席に座っていると、心地よくて、時間がゆったり流れていく。B型肝炎訴訟も、そうやって流れていた。職場の机の上には、先輩から代々引き継がれたB型肝炎訴訟のファイルがあり、私も少し文書を付け足して、そして後任者に引き継いだ。私の担当した数年の間に、訴訟は結論が出なかったからだ。

あの裁判が、2006年6月になって、ようやく決着したのだという。いったい、何年かかったのか。ほとんど20年近い時間である。予防接種と罹患の因果関係を一定程度の根拠で法的に確定させるために、日本では20年近くもの歳月がかかる。厚生省の当時の職員たちも、私と同じように、ファイルを順送りしていたのだろう。裁判所もそうだ。この間、子供だった原告は、いちばんいい時代を失ったのかもしれない。原告の腕に実際に注射針を差した方は、いま、どこでどうされているか。。。

札幌の司法記者時代、私は「北炭夕張訴訟」と呼ばる訴訟を担当したことがある。大勢の方が亡くなった夕張の炭鉱事故。その遺族たちが、炭鉱事故の訴訟で初めて国の責任を問うたのである。訴訟は1994年3月に和解したが、提訴から実に12年も要していた。夕張訴訟が法廷で静かに静かに進んでいる間に、日本の石炭産業は完全に終焉を迎えた。

長すぎる裁判は、歴史の残務処理役でしかない。
by masayuki_100 | 2006-06-17 17:53 | ★ ロンドンから ★