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ニュースの現場で考えること

あの「指差し会話帳」がDVDになる

過日、大学時代の1年後輩の仕事場へ出掛けた。赤坂の地下鉄駅から、歩いて数分。エレベーターを降りると、目の前にすぐ、仕事場の入り口がった。卒業後も時々会ってバカ話をしていたが、職場を訪ねるのは初めてだ。外見や喋り方は学生のころと変わっていないのに、職場では上司然と振舞っていて、なにやら、ヘンな?感じである。

で、その職場で、彼が携わる新しいプロジェクトの話になった。

「旅の指差し会話帳」というシリーズをご存知だろうか? 情報センター出版局という出版社が作っている言葉ガイドである。旅行で遭遇する状況ごとに、マンガやイラストが配置され、その国の言葉(文字と発音)が記されている。旅行好きの人なら、書店で見かけたことがあるかもしれない。聞くと、これまでに約60カ国分を出版し、全シリーズで160万部も売れたのだという。なんだか、すごい数字である。彼は大学卒業後、情報センター出版局に入り、いまは「指差し会話帳」の事業に携わっているのだ。

私は大学4年のとき、初めて外国に旅行した。とにかく安く、かつ長く滞在できるところにしようと思い、バングラデシュ、インド、ネパールを選んだ。2カ月弱くらい居ただろうか。飛行機もそのときに、初めて乗った。ビーマン・バングラデシュ航空という飛行会社の飛行機で、マニラ、バンコクと経由して行くうちに、半日以上も遅れてしまい、ダッカの街に着いたのは夜中近くだった記憶がある。

バングラデシュもそうだったし、インドもそうだったのだが、全くその国の言葉を知らなくても、しばらくウロウロしていると、自然に現地の言葉は覚えるものだ。でも、どうせだったら、最初から少しでも勉強して行った方がいい。事前勉強ができなくても、現地で上手にその言葉が使えたら、旅行はもっと楽しくなる。私がインド方面に行ったころは、「指差し会話帳」などという便利なものは無かった。

で、後輩の話に戻るのだが、間もなく、指差し会話帳のDVD版を出すのだと言う。英語や中国語、韓国語なんかはテレビでも学習番組をやっているし、CDも多数売られている。でもアフリカや中東、東欧など馴染みの薄い国々の言葉は、どんな発音なのか、滅多に知る機会が無い。だから、こういう「指差し会話帳」シリーズが音声(絵も)付きに育っていったら、それはそれで、非常に役に立つのではないか、と思う。

彼の職場のHPにも掲載されていたが(元ネタは月刊文芸春秋)、「指差し会話帳」のアラビア語版は、イラクに派遣された自衛隊員も使っていたそうだ。ところが、隊員がその本のページを指差して子供たちとコミュニケーションを取ろうとした際、実は意思疎通ができなかったのだという。本に不備があったのではなく、絵(マンガ)に添えられたアラビア語の文字を子供たちが読めなかったからである。それを知った情報センター出版局のスタッフは、HP上の<★「指さし」が見せたイラクの悲しい現実!>の中で、こう書いている。

<『指さし』にも限界があった、とは思いたくはありません。しかし、これが世界の現実だということは、紛れもない事実です。イラク復興のニュースは日々メディアからは消えていきます。その一方で、この記事は、『指さし』でもコミュニケーションがとれない人々が世界にはいるという現実をまざまざと見せつけてくれました。一日も早く、彼らに字を読み、書き、物語の面白さを知る喜びを味わう日が来ることを願ってやみません>

「指差し」がDVDになったら、発音を録音して、現地で本と一緒に使えるかもしれない。録音して持って行かなくても、現地に赴く人の頭の中に録音しておくこともできる。面倒でなかったら、パソコンとDVDを両方とも携行すればいい。技術の発展は日進月歩だから、ほんの数年後には、手のひらサイズで絵も文字も発音も持ち運び出来るようになっているかもしれない。それが現実になったら、シュールな絵のように映る異国の文字も、ぐんと親しみが沸くかもしれない。
by masayuki_100 | 2005-12-04 18:57 | ■2005 東京発■