ブログトップ

ニュースの現場で考えること

「対案を出せ」と言う前に。

竹中平蔵氏のウエブサイトに、衆院解散を受けての記者会見の様子が収録されている(もちろん内閣府のHP内にもある)。

その中から以下のQ&Aを抜粋してみたい。

(問)大臣は、担当大臣になられまして、2003年の竹中5原則から始まりまして、郵政民営化の有識者会議であるとかタウンミーティングであるとか、手順を踏んできたわけですが、結果としてこのように否決になったということに対する責任について、どのようにお考えなのか。それと、その責任を何らかの形でとるおつもりがあるのか、その辺をお願いします。

(答)責任に関しては、明白であると思います。私たちの主張を滔々と展開して、国民から信任をいただくこと、そしてその信任の上に立って、郵政民営化の法案を将来の国会、次の国会でしっかりと通すこと、それが私の責任であると思っております。
 重要な点は、私たちは郵政の民営化を提案して、詳細な資料を提供して、そして190時間を超える時間にわたって答弁したわけですけれども、反対する側からは何の対案も出されていないということです。この点は大変、この問題を考える上で重要だと思います。
 皆さん、郵政の問題、「このままでいいとは思わない」と言います。「ではどうするのですか」ということになるわけですが、もちろん自民党の中の反対派も対案を出しておりませんし、民主党も何の対案も出しておりません。ただただ、「嫌だ、嫌だ」と言っているだけではないでしょうか。きちっとした対案があって、それで論争で敗れたということであるならば、これは責任のとりようもありますけれども、我々がきちっと案を示しているのに対して「嫌だ、嫌だ」と言うだけで、それではどうするのかと。将来に問題があることを認めながら「嫌だ、嫌だ」と言われても、こちらは責任のとりようもない。私は、今回のこの政策論争について、そういった点もぜひきっちりと国民の皆様には御理解をいただく必要があると思います。
 重ねて申し上げます。対案は、何も出されておりません。そしてこれは、これまでの改革の論争、例えば、経済政策の枠組みをどうするのか。反対する人はたくさんありましたけれども、対案は誰からも出されておりません。不良債権問題をどうするのか。私たちは提案しました。反対はたくさんありましたけれども、対案はどこからも、何も出されておりません。こういう形を続けてよいのでしょうか。私はやはりこれこそが、今問われている問題の一つであると思っております。

(抜粋終わり)

これと同様の発言を、竹中氏はその後の記者会見でもテレビ番組等でも再三行っている。

だが、竹中氏の言うように、本当に対案は何も出されていなかったのか。そもそも、竹中氏の言う「対案」とは、どのようなものを指しているのだろうか。その点を竹中氏は明らかにしていない。少なくとも、最大野党の民主党が郵政民営化について、自らの考え方・立脚点を何も示していないということはない。暇に任せて、国会議事録を読んでいけば、主に「政府vs野党」の論議の中で、種々の問題点があぶりだされていることは良く分かるし、民主党にしても2005年3月30日 民主党の「郵政改革に関する考え方」についてなどの文書において、郵政問題についての考え方は明らかにしてきた事実はある。





ここから先は、野党の体たらくを脇に置いて書く。そして話も少しそれるのだが。

この「対案を出せ」は、実はかなりのクセものではないか、と私はかねがね思っている。「対案」とは文字通り、なにがしかの提案に対して、それに対抗する提案を行うことなのだろうが、そもそも政権は圧倒的な情報量を持ち、それを自在にコントロールできる立場にある。情報を出すタイミングも自在に計ることが可能だし、自らに都合よく取捨選択することも可能だ。巨大な官僚機構に対しても、本気で歯向かわない限りは、ある程度は自らの意のままに動かすことが出来よう。だからこそ、長年、政権に就いている自民党には、野党とは比べ物にならない政策立案能力がある。

そうした立場にある政権が、郵政民営化法案を提示し、それが国民の代表者たる議員たちによって否決されたのだ。「あなたの提案はおかしい」「提案には反対だ」という声が多数になったのである。この厳然たる事実に対し、「対案を出さずに反対する人はおかしい」と切って捨てる姿は、どこか傲慢に感じるのだが。「対案を出さないのはおかしい」という前に、本来なら、なぜ賛同を得られなかったを真摯に考え、表明するのが、所管大臣のあるべき姿勢ではないか。

たぶん、こうした姿勢は郵政問題に限らない。二項対立で語られるような大きな問題、あるいは政府にとって都合の悪い問題などにおいては、しばしば「対案を出せ」という言葉が登場する。警察の裏金問題を取材しているときも、「裏金をつくらずに済むように新聞も対案を出せ」という声が警察側から出たことがある。すべての事実関係や情報が表に出されたならともかく、そうではない状態で、「対案」など示せるわけがない。

「対案を出せ」と為政者なり官僚なりが本気で求めるなら、情報開示を徹底し、野党であろうと誰であろうと、必要な情報には特別の差異無くアクセスできるようにしなければならない。それが「対案を出せ」の前提条件ではないか。
by masayuki_100 | 2005-08-14 15:33 | ■2005 東京発■