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第2次記者クラブ訴訟の法廷にて

フリーランス記者の山岡俊介さんは、おそらく、いま日本で有数のフリー記者である。武富士事件を徹底追及したことは広く知られているし、ネット上でも「ストレイ・ドッグ」というブログを開設し、取材の成果を惜しみなく披露されている。最近では、自宅が何者かに放火されるという事件に遭遇している。それと、どうでも良いことかもしれないが、山岡さんは私の高校の1年先輩である。

さて、先日、同じくフリーランス記者の寺澤有氏が原告となった「第2次記者クラブ訴訟」の口頭弁論が東京地裁であった。私はこの訴訟を個人的に支援しており、陳述書も提出している関係から、当日は休暇を取って一般傍聴者として法廷に足を運んでみた。しかし、驚いたのは、傍聴人の少なさである。世上、これだけ記者クラブのことが問題になっているのだから、もう少し傍聴席がにぎわって良いのではないか、と率直に思う。とくに、肝心の既存メディア(この訴訟の場合、物理的に一番近距離に居るのは司法記者クラブ加盟の記者)の記者がほとんどいない。全体で20人弱のところ、1、2人程度だったように思う(私は既存メディア側の人間なので、さっと見ただけで分かるのだ(^^;) これでは、記者クラブをどうするか等の「議論」など、いつまでも始まらないだろうな、と思う。相手が出てこなければ、議論など進めようがないのであって、片方に残された道は「吼える」ことしかない。

上記の山岡さんは、寺澤氏支援のため、その日、原告側証人として出廷し、なかなか良い話をされた。その内容は、ストレイドッグの記事に詳しいので、ぜひ、そちらを読んでもらいたいし、ここでは再録しない。

その後、オランダの特派員、ハンスさんと会い、食事しながら話を交わした。ハンスさんはなかなか面白い人で、今年7月、下記のような陳述書をこの第2次記者クラブ訴訟に提出している。私の陳述書など及びもつかないほど的確で、簡潔で、かつ説得力がある。読んでもらえれば分かるとおり、日本では、外国人特派員が取材できるのに、日本のフリーランス記者(雑誌記者やブロガーなども)は取材できない、という奇妙な構造が出来上がっているのだ。ほんと、へんだよ。

私自身は、このブログでも再三、言っている通り、記者クラブは加入制限を撤廃、もしくは大幅に緩和して、原則誰でも出入りできるようにすべきだと考えている。ただし、せっかく、役所や企業、経済団体の奥深くに「記者室」を持っているのだから、これは手放さない方が良い。できるだけ権力の近いところでウロウロするのは、とても大事なことだと考えるからだ。会見をどこか主催するか等々、主導権を役所側に持たせない意味からも、これは大事なことだと思う。もちろん、光熱費や家賃相当分等の経費は、記者側が負担しなければならない。

たぶん、一番良いのは、正社員や派遣社員、契約社員、フリーランスといった雇用形態とは無関係に、また、新聞、雑誌、テレビ、ネット、放送、通信といった発表形態とは無関係に、およそ、取材者と名の付く人をすべからく抱える団体をつくって、その団体の発行するIDを持つ人は、全国どこの記者クラブでも情報にアクセスできる、、、そんな仕組みではないかと思う。

ハンスさんと話していたら、オランダにはまさに、ジャーナリスト協会みたいな団体があって、それに似た運用がされているらしい。発表前に資料を渡され、期日まで報道しちゃいかんという例は日本には国家レベルから市町村レベルまで無数にあるが、オランダでは国家予算に関する報道が唯一の例外だという。

以下はハンスさんの陳述書。面白いので、ぜひ、読んでもらいたい(文章は読みやすいように一部改めている)。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

陳述書

姓 Van der Lugt (ヴァン デル ルフト)
名 Hans (ハンス)

国籍 オランダ

1993年9月 Leiden国立大学(オランダ)文学部日本学科修士卒
1995年~現在 NRC Handelsblad新聞(オランダ)日本特派員
2002年7月~2003年6月 日本外国特派員協会(FCCJ)会長
2003年7月~2005年6月 在日外国報道協会(FPIJ)会長

■原告・寺澤有氏との出会い

2001年7月19日、大内顕氏(元警視庁会計担当職員)が、警視庁の裏金について、記者会見を行いました(『FRIDAY』〈2001年8月10日号〉・甲第14号証)。寺澤氏はこの記者会見をコーディネートしており、私のような海外メディアの特派員にも声をかけてきました。特派員では、『フィナンシャルタイムズ』記者や私など数名が取材しました。

甲第14号証に、次のような記述が出てきますが、この発言は私のものです。

《会見に出席した海外紙の記者が驚いて「これはどういうことですか。大内さんの話に加え、日
本のメディアの異常性も本国へ送稿したい」と筆者に電話してきたほどだ。》

日本のメディアは「記者クラブ」という組織をつくり、横並びの報道を続けています。国民が本当に知りたい、知らなければいけないことは、伝えていません。大内氏の記者会見でも、それがよくわかりました。一方、私は、寺澤氏のような、真実を伝えようと努力しているジャーナリストが日本にもいることを知り、とてもうれしく思いました。

■シンポジウム「記者クラブを考える」

2002年7月から2003年6月まで、私は日本外国特派員協会会長として、記者クラブ問題を積極的に取り上げました。記者クラブは海外メディアに対しても、とても閉鎖的です。このような活動が実り、2002年11月、ヨーロッパ連合(EU)が日本政府に対し、「ジャーナリズム:情報の自由かつ平等なアクセス」との標題を掲げ、「外国報道機関特派員に発行されている外務省記者証を、日本の公的機関が主催する報道行事への許可証として認め、国内記者と平等の立場でのアクセスを可能とすること」「記者クラブ制度を廃止することにより、情報の自由貿易に係る制限を取り除くこと」とする優先提案を行いました(甲第9号証・63~65ページ)。

同提案文書中、「(日本の)大衆向け週刊誌をはじめ、その他の週刊、月刊、隔月刊誌、また当
該機関と直接関連しない分野を専門とする報道機関も(記者クラブから)排除されていることは
、特筆に価する」と指摘されていますが、これはまさに「特筆に価する」ことだと思います。

2003年3月15日、日本外国特派員協会は国際ジャーナリスト連盟(IFJ)と共催で、「記者クラブを考える」というシンポジウムを開きました(甲第9号証)。私は、寺澤氏から日本のフリーランスジャーナリストが直面している記者クラブ問題を講演してもらいたいと考え、パネリストに迎えました。シンポジウムでは、高島肇久外務報道官(元NHK記者)が、「基本的には取材は自由であるべきであり、また、取材に対してはすべて門戸が開かれるべきである」(甲第9号証・20ページ)、「少しずつですが、取材拠点としての記者クラブが、内外のプレスにより開放されていく姿は実現しています。こうした努力が日常さまざまなかたち、さまざまな場所で進んでいる」(同)と発言しました。

実際、2004年3月29日、高島外務報道官は公的機関に対し、「外国記者登録証保持者の公的機関における記者会見への参加について(依頼)」という申し入れ(甲第15号証)を行い、さらに門戸が開かれるよう努力しています。

■武井保雄元武富士会長判決公判の傍聴取材と判決要旨交付

2004年11月17日午前10暗から、東京地方裁判所で武井保雄元武富士会長に対する、電気通信事業法違反(盗聴)等被告事件の判決公判が開かれました。私はあらかじめ在日外国報道協会を通じ、東京地裁総務課広報係に、「平成16年11月17日武富士事件裁判における取材の件」(甲第16号証の1)および「取材許可願」(甲第16号証の2)という文書を提出し、許可されておりましたので、のんびり法廷へ向かいました。

法廷入り口付近で寺揮氏と会うと、彼は「今回もあらかじめ東京地裁総務課広報係に、傍聴取材と判決要旨交付を文書で申請していたが、許可されなかった。広報係が『一般傍聴席は先着順です』と言うので、朝7時ごろから並んだ」と話していました。寺澤氏は武富士問題といちばん熱心に取り組み、報道し続けてきたジャーナリストです。その彼が裁判所から傍聴取材も判決要旨交付も許可されず、一般傍聴希望者とまったく同じ扱いを受けていることが、私には全然理解できません。

一方、司法記者クラブ加盟各社は、武富士からの高額名誉穀損訴訟や広告引きあげを恐れ、武井元会長が逮捕されるまで、ほとんど何も報道してきませんでした。どうして、このような「記
者」とは名ばかりの人たちに傍聴席と判決要旨が用意され、寺滞氏には用意されないのでしょう
か。東京地裁が寺滞氏に対し、悪意でも持っていなければ、考えられないことです。

寺滞氏の「意見陳述書」(甲第4号証)の冒頭に登場する「ある外国特派員」は、私です。私は、松本智津夫(麻原彰晃)被告の判決公判でも、江川紹子さんが一般傍聴席に座っていて、驚き
ました。彼女こそ、もっとも優先的に傍聴席を割り当てられなければならないジャーナリストですし、それに反対する意見は、メディア内部でも世論でも、ないはずです。

武井元会長判決公判終了後、私は広報係から判決要旨を交付され、「取り扱いに注意してください」と言われました。しかし、寺滞氏がそれを入手できなければ、正確な報道が行えないことは明らかでしたので、私は彼にコピー1部を提供しました。この行為はジャーナリストとして何ら恥じることはないと断言できます。

■結論

日本では、「ジャーナリスト」という概念が公的機関に理解されていません。だから、本来、ジ
ャーナリストならば誰でも公的機関を取材できるはずなのに、特定少数のメディアだけが独占的に便宜供与を受けられる記者クラブなるものが存在します。公的機関は税金で運営されている以上、このようないわれない差別は許されません。もし、許されるというのであれば、法律的な根拠を示してください。私たち特派員が全世界へ配信します。

現在、「メディア」には、新聞やテレビ、ラジオのほか、雑誌や書籍、インターネットなどがあります。ジャーナリストにも、正社員だけでなく、契約社員、フリーランスなど、様々な雇用形態の者がいます。そのうち、特定の新聞やテレビの正社員だけが公的機関から利益を与えられる記者クラブ制度は明らかに間違っています。これがある限り、日本で「取材・報道の自由」が保障されているとはいえません。

最後に、裁判所が適正な判断を下され、寺澤氏がジャーナリストとして、ますます活躍できるよう、心から願っております。
by masayuki_100 | 2005-07-24 13:31 | ■2005 東京発■ | Trackback(6) | Comments(12)
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Commented by kamiyam_y at 2005-07-25 02:49
遅ればせながら、再開おめでとうございます。
高田さんらしい力作がさっそくアップされ、読ませていただきました。
ハンスさんの陳述書とってもおもしろいです。
オランダの「ジャーナリスト協会みたいな団体」の例参考になりそうですね。「記者室」機能を捨て去らずに、記者クラブを「原則誰でも出入りできる」よう開放することという提言、なるほどと思います。雑誌やネットといったメディアにも、フリーランスにも記者クラブを開いていくことは、日本のジャーナリズム全体にとって、重要な課題でしょう。
個人的とはいえ、既存メディアの側にいながら「第2次記者クラブ訴訟」を支援するのは大変なことなのではと拝察します。もちろん、記者クラブ加盟の記者があまり議論に参加していない状況が問題なのでしょうが。
これからも楽しみにしております。どうぞよろしくお願いいたします。
Commented by みずき at 2005-07-25 12:11 x
こんにちは。通りすがりの者ですが、「第2次記者クラブ訴訟」の口頭弁論が東京地裁で行われていることなど、全く知らなかったので、読んで大変参考になりました。お礼申し上げます。

自分は昔から記者クラブ制度の開放推進論者です。あと、新聞記事を、記者の署名入りにして欲しいですね。欧米で当たり前のことなのに、なぜ日本では、プロの記者の記事さえ匿名になるのでしょうか?

Commented by ぁぃ at 2005-07-25 12:49 x
お世話になっています
文章の書き方や切り口など、いろいろ勉強させていただいているので、こちらが再開されて、とてもうれしいです

早速トラックバックさせていただいたのですが、文字化けしてしまいました
すみません・・・
怪しいエントリーではないので、よろしくお願いします
Commented by kawahara at 2005-07-25 16:53 x
■武井保雄元武富士会長判決公判の傍聴取材と判決要旨交付
 の段落で、2~3ヶ所「寺澤氏」と書くであろうところが、違う名前になっているように思います。
ご確認のほど、よろしくお願いいたします。
Commented by sleeping eagle at 2005-07-25 19:16 x
昨日夜、TBSのテレビを見ていてアレ?という場面がありました。宮城県警が、児童ポルノの取締りで、逮捕の場面をその前の捜査を含めて放映していたのです。これって内偵捜査ですよね。つまり内偵中の捜査を民放の特定の社に取材させ、捜査に基づく逮捕場面をやはり特定の社に「スクープ」させているのです。宮城県警って、浅野知事と資料の開示を巡って問題を起こしていて、捜査の現場を放映されるのは格好の宣伝ですよね。しかも、内偵捜査ですから守秘義務違反行為ですよね。とんでもない報道が、行われている気がします。
Commented by トリル at 2005-07-26 05:02 x
ま、いわゆるダブルスタンダードですね。
要するに日本のジャーナリズムは組織としては体制にどっぷりのシャンシャン状態なので、不確定要素にして新興勢力は排除の方向でってことと思ってます。普通はもうパイの分け方は概ね決まっているんじゃないでしょうか?で、現場より営業や経営の方が組織内で強いのでしょうね。
ジャーナリズムコンテンツに読者や視聴者がどういう意味でどれほど金と反応を出すか?また組織がそれによって支えられてると言う意識はあまりないでしょう。同業社内での地位と発言力、広告収入、政財界の知古と出入りが、現実的な全てになってやしませんか?
Commented by ume at 2005-07-26 14:32 x
トリルさんに同感!
そろそろ読者である私たちが本気で日本のジャーナリズムを変えようと声を上げる時期なのかもしれません。
では、どうやって?
う~ん・・・・・
Commented by MBC幕張 at 2005-07-26 16:56 x
初めて書き込みします。
>そろそろ読者である私たちが本気で日本のジャーナリズムを変えようと声を上げる時期なのかもしれません。

やっぱり自分で情報を見極めないと駄目なんでしょうね。
私はここ数年は地上波は見ておらずCNNやBBCで済ませてます。
やはり一度見放されないと変わらないんじゃないですかね?
Commented by トリル at 2005-07-27 02:32 x
>では、どうやって?

日本政府は借金漬けですからね。
どのみち大増税かインフレで、ボカーンと政治活動が大衆化するでしょう。
問題は自ら考えリスクを取る層がどれほど発生し、議論が深まるかです。
本来議会政治とはそういうモノではないでしょうか?
派閥のボスが暗躍するようなスタイルだと何処行くか判りません。
多分迷走の末、原則も戦略もなくワーッと何処かに躁状態で突っ込んでパーッと散るんじゃないでしょうか(笑)
日本の文化的にはそんな気がします。

それとも今度こそ変われるでしょうか?
Commented by トリル at 2005-07-27 02:53 x
読み返すと、どういう連絡なのか判りにくいので追記します。

議会制民主主義においてジャーナリズムへの欲求と政治的成熟度は相関関係にあります。

(既存勢力に参加する事が不適切に思って)実質的に政治への参加がスポイルされてる状態では、スポイルされた層はメディア的代弁者を持たないと考えて良いでしょう。
公明党や共産党、左派論陣が自前のメディアを使って事象を有利に説明しようとしてるのが分かり易いと思います。

つまり特に自分たちを代弁する必要がなくても、より中立で客観的合理性を説明しうるメディアが望みならば、それぞれが何らかの理念を持ち政治化した結果として、そのようなメディアが生まれると思います。
Commented by こんにちは at 2008-12-10 07:25 x
がんばってください!
Commented by 李得実 at 2010-09-20 19:08 x
みなさま、はじめまして~
                    2010・9・20(月曜)大阪
人間性も豊かな「“ハンス・ヴァン・デル・ルフト」さんとは、外国特派員協会で知り合いになりまして、名刺交換などもして、ハンスさんが外国から連絡も交信していたのですが、その後、自宅を放火されてしまい、その連絡先なども焼失してしまい、不明です~どなたか、“ハンスさんの連絡先=携帯電話とメール番号を教えていただけませんでしょうか?、“万国万民主権群の奪還につながる、貴重な情報群を提供などしたいのですが~よろしくお願いします~
☆国内外万民との茶話交流を!~

“無始無終の大自然から生起した、この世で最高の“大自然法にゆだねることこそが、自他を、万国万民の主権群(幸福&裕福&健康なども含む~)を、奪還できることになる~

李 得実
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