人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ブログトップ

ニュースの現場で考えること

「きょう逮捕へ」は本当に権力監視か?

この記事は私が「酔っ払い記者」の名で、ジャーナリスト考現学氏のブログにコメントとして書き込んだものです。したがって、先に、同氏の「記事きょう逮捕へは必要か」を先にお読みください。


■「こうした公表制度がないために、記者たちが当局に公表を迫らなければならない。どういう人物をどういう被疑事実で逮捕しようとしているのかという捜査当局の動きを把握し、逮捕状の請求という行政手続きに入れば、それをマスコミで公表することで当局に発表を迫るのだ。記者がこの努力を怠れば、当局が逮捕権を乱用する暗黒の国家になる可能性が高い」と書かれている部分について。

★この認識はかなり甘いように思います。すでに逮捕権は十分に濫用されているのであり、そのことに目を向けず、警察の捜査をほぼ無条件に是認したうえで「きょう逮捕へ」の記事を乱発しているのがメディアの現状です。

★「逮捕権の乱用」監視がメディアの役割だというならば、手書きのビラを配っただけで住居侵入に問われた東京・立川の事件、同じくビラ配りだけで国家公務員法違反で逮捕された事件、パキスタン人のヒムさんがアルカイダの一味だとして逮捕された事件、そして今まで何の問題もなかったのに在日外国人を突然入管難民法違反で逮捕する各地の事例、、、そういった出来事に警鐘を鳴らしつづけるべきでしょう。

★「きょう逮捕へ」の後に続く報道はほとんどの場合、容疑者がいかにヒドイ人間だったかをこれでもかこれでもかと報じます。警察権力と一緒になって容疑者の非を並べている場合が大半でしょう?そもそも逮捕記事とは、「捜査当局の我々はこう見ているんだよ」というものでしかありません。しかも逮捕後はメディアが容疑者に直接接することもできません。そうした環境の中で、警察からもらった情報で「容疑者は、、、」と書き続ける。密室の中でのやり取りを一方的に聞いただけで、どうして「捜査本部の調べで分かった」と確定的事実であるかのように報道できるのでしょうか?

■「社会が警察に逮捕権を認めているのは、社会の秩序を維持するためである。その目的を踏み越えないよう、警察担当記者は見張っていなければならない」について。

★警察担当記者は(他の多くの担当記者も同じ)相手との付き合いを深めるにつれ、相手と一体化し、相手に文句を言われない範囲での「スクープ合戦」に埋没していきます。「きょう逮捕へ」はその典型じゃないですか。
★「きょう逮捕へ」が権力監視などと言っている場合ではないと思います。本当に監視するなら、当番弁護士制度があることを積極的に報道し、その弁護士から取材し、公判にも必ず出かけ、捜査段階で違法性がなかったかどうか、容疑者段階での記事に虚偽がなかったかどうか(つまり警察に騙されていなかったどうか)等の取材を徹底すべきなのです。その結果、誤った情報を流した捜査幹部がいれば(警察は事件捜査を有利に運ぶためにメディアを積極利用しますよね?)その幹部に問いただすべきです。

★もちろん、警察内部に深く取材網を張ることを否定しているわけではありません。逮捕を積極的に公表させることも必要です。警察取材の重要性も否定しません。しかし、それは「きょう逮捕へ」をスクープすることが大事という発想とは、別の部分にあるのです。

★民主主義の番人なら、それぐらいして当然です。民主主義の番人なら、例えば、予算審議の議会主義を否定する警察の裏金問題を徹底追及してみせるべきです。
酔っ払い記者
by masayuki_100 | 2004-12-03 02:30 | |--逮捕予告は権力監視?