ブログトップ

ニュースの現場で考えること

インタビュー集「希望」の書評、読後感

 インタビュー集「希望」(旬報社刊)が、ありがたいことに、あちこちで好評を頂いている。「予想以上に分厚い」という声も頂くが、世の中の様々な人々の声をきちんと伝えようとしたら、こんな分量になった。しかし、分厚い=読みにくい、ではないと思う。インタビューされた人が、読者であるあなたの前で自在に語り始める。。。そんな特別な一冊だ。
 最近の書評やネットで拾った読後感を紹介しておきたい。

東京新聞 中日新聞の書評 (記事のPDFはこちら)

 人間が生き続けるために必要な事柄の一つは希望を保つことであろう。だが原発事故を含む東日本大震災後では、どれだけの人々が希望を失っているだろうか。本書は大震災の前年にインタビューを開始し、六十三人の<希望>を収集した大書だ。発刊前に災害が起きたため、被災者の声も収録されている。登場者は幾人かの著名人を含み、大半が市井の人々。高校生から八十代までを網羅しているが、比較的三十代、四十代が多い。その仕事と場、そして人生体験の多種多様さ。このこと自体に評者はある種の希望を感じた。
 白地に赤い「希望」の書名と、笑顔あふれる家族の白黒写真のカバーに固まった心がほぐれてゆく。表現は明るいが、絶望を希望に変え、希望に到達していくまでを語る人々の心情は重い。
 語り手の言葉遣いが一言一句そのまま記されており、声音や抑揚までもが読む者に反響する。その率直な語りの中に、虚を衝(つ)かれる感動的な言が浮上してくる。プロの書き手である二十人の取材者は、芝居のト書きに似た説明を適所に補うだけで黒子に徹する。語り手が一気に独白する人生は、まさにその人だけのドラマである。内容ごとに「生きて、生き抜いて」「既成を疑う」「日本で生きる、外国で生きる」「転身、その後に考えたこと」などの章立てはまことに魅力的だ。
 印象的なのは、彼らが自身の希望に言及したりその<ありか>を設定することなく、通過してきた地点、いまある位置について淡々と述べていることだ。度重なる試行錯誤や艱難(かんなん)を乗り越えてきた自信に満ちている(後略)。

ブログ revolution から

 とかく、自分さえ良ければ良い、他人を蹴落として自分だけが這い上がれば良いといった、資本主義的競争原理に基づいた利己主義で生きるのが人間の本性だと思いがちだ。『希望』高田昌幸編(旬報社)を読むと、世の中、そんな人ばかりでは無いことが分かる。

 24時間365日急患を受け付ける「スマイル子どもクリニック」を立ち上げた加藤さんご夫妻。夜間救急に対応してくれる病院が少なく、たらい回しになって亡くなる患者が後を絶たない現状を憂え、最初は無給で預貯金を切り崩したり、自身が過労で倒れ救急車で運ばれたりしながらも、とにかく子どもの命を助けたい一心で、苦労を苦労と思わずチャレンジし続け、徐々に理解者や協力者が増え、現在は常勤医師が2医院で5人、非常勤医師35人、看護師・薬剤師・事務員・警備員120人。最近は、海外難民キャンプでの医療支援も始めたとのこと。医は算術でなく仁術だという事を実践している人達が居ることは、何とも心強いことだ。

 長野県安曇野市に、鉄格子もフェンスも鍵も無い少年院「有明高原寮」があり、短期集中で矯正教育を受けている少年たちと、地域の女性や小中学生が「鐘の鳴る丘コンサート」を開いているという。生徒(16~19歳の少年20人ほど)が先に会場にいて歌い始め、その歌声の中へ、女性合唱団が入場し、互いに向き合って表情を見ながら歌う。心を一つにして歌うことで、一瞬のうちにきずなが生まれる。歌う人も聴く人も、会場中の人が感激し、泣く人が沢山いるとのこと。この音楽指導をしている西山さんは難病を抱えながら、「命がけであの子たちと付き合ってます。命がけで音楽やるんです。出来るときに何でも一生懸命にやっとく。それが成功に繋がるし、次の喜びや達成感に変わる。苦労や厳しさの向こうに未来ってあるでしょ?」と明るく語る。

 他にも、「元受刑者だろうが関係ない。みんな人生かかってるから。」と受刑者や障害者を受け入れている建設会社の社長や、「守銭奴になったらいかん。」と社長の給料より従業員の給料を高くしている電気チェーン店の社長、両手の無い書家など、世のため人のため真摯に、試練を超えて逞しく生きている素晴らしい人達が紹介されている。

差別や偏見、虚栄心に満ちた社会の中で、自分の幸せより他者の幸せを考え、弱者に寄り添い、罪を憎んで人を憎まずの温かい寛容な心で地域を変える人達が居る。華やかなマスコミに登場したり、表彰されたりする事も無く、人知れず、よりよい社会、誰もが幸せに生きられる社会の実現のために、ひたむきに尽力する人達が居る・・・


「希望」という名の歌声が聞こえる めい展じゃあなる

 久しぶりに、いい本と出会いました。「希望」(高田昌幸編、旬報社)。大津波に生活を砕かれた岩手の16歳の女子高生、回りの医者たちが逃げ出す中で孤軍奮闘して薬害エイズ患者を治療した医師、少年院の生徒たちと歌い続ける合唱団のおばさんもいました。「あなたの希望は何ですか」というインタビューに答えた全国の47人が登場します。3・11で大きくへこんだニッポン。でも前を向いて懸命に生きる、元気な人たちがいるのです。

 寺山修司はすごい人です。彼のポケットには名言がつまっている。「五木寛之の世界」(文芸春秋社)に「黒いアルバム」という寺山の文章があります。五木の小説に出てくる主人公たちは、無の世界を見た「人生をおりた」人が多いそうです。「人生をおりる」というのは、「希望という病気」から全快してアッケラカンと風に吹かれて生きてゆくことだ、と寺山は書いていました。

 アラ還の年代になると「夢もチボー」もなくなります。眠りが浅くなって見るのは悪い夢ばかり。特に3・11以降は夢見が悪い。寺山さんがいうように、希望とは無縁のアッケラカン人生もいいな、と無の世界が広がっていました。
 そんな時に読んだのが「希望」です。
 長野の合唱おばさんたちは、毎年1回「鐘の鳴る丘コンサート」を開いて30年になるそうです。場所は安曇野市にある少年院の体育館。おばさんたちの女性合唱のあとに生徒たちの男性合唱があり、お客さんと一緒に童謡などを歌ったあとがメインの混成合唱です。それぞれ別々に練習してきて、本番で初めて一緒に歌う混声合唱。それが大きな渦となって、熱く燃えるような歌声が広がるそうです。「歌う人も聴く人も、会場中の人が感激しちゃって、泣く人がたくさんいてね。わけもなく涙がでてくるんですよ。最後に長渕剛さんの<乾杯>を歌って、生徒たちも涙、涙でね」(指導者の西山紀子さん)

 北海道の人も出てきます。イラクで人質になって有名になった高遠菜穂子さんは今も支援のボランティアを続けています。夜間中学をつくる運動を20年間やっている札幌の工藤慶一さんとか、頑張っている人がたくさんいるんですね。
 小さくても希望の灯をしっかり見据えて前に進む人たちの姿に打たれます。アッケラカンおじさんは赤面の限りです。


インタビュー集「希望」(旬報社) アマゾンのページ
by masayuki_100 | 2011-09-27 07:45 | ■2011年7月~ | Comments(0)