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ニュースの現場で考えること

「原子力防災専門官」というポストがある

「原子力防災専門官」とは何か。言葉の説明としては、こうである。東海村の臨界事故を契機に新たに設けられたポストで、原発事故時には、情報収集のカナメになる。全国各地のオフサイトセンターに常駐している。もちろん、福島にも、だ。

et="_blank"><原子力防災基礎用語集>から 原子力防災専門官は原子力災害対策特別措置法第30条の規定により、国の緊急時防災体制の中核的存在として、文部科学省又は経済産業省の職員として、文部科学省又は経済産業省が指定した原子力事業所の所在する緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)に常駐し、原子力事業所に係わる業務を担当する。

◎1999年11月17日 衆院科学技術委員会
中曽根(弘文)国務大臣 原子力緊急事態が起きますと、程度に応じまして緊急事態宣言が行われるわけでありまして、その後、関係省庁、地方公共団体、また原研の関係者あるいは原子力事業者等関係者がいわゆるオフサイトセンターに集まります。そして、原子力災害現地対策本部長がこれらの者に対して一体的に指示を行うことによって、原子力事業者の原子力防災組織、原子力防災専門官、それから原子力研究所やあるいは原子力専門家、自衛隊、消防、警察、医療チーム等々が連携をとりつつ総力を挙げて緊急事態応急対策を実施する、そういうことになっております。

同じ委員会での斉藤政務次官の答弁
○斉藤政務次官 今回、特別措置法第三十条で原子力防災専門官が規定されております。この原子力防災専門官は、原子力事業所の所在する地域に駐在して、平常時においては、原子力事業者に対し防災業務計画の作成等の予防措置に関する指導助言を行う。それから緊急時においては、事業者からの通報があった場合に、直ちに現場においてその状況の把握のために必要な情報の収集に当たるということになっております。
 御質問のいわゆる地方自治体との関係でございますけれども、平常時から原子力事業者の防災対策に関して情報交換等を行うほか、緊急時においては、特に初動期において、現場の状況等の情報伝達を行うなど、原子力事業者の行う対策と、国、自治体の行う対策の相互の連携を図るような役割を果たすことになるかと思います。
 その条文ですけれども、通報があった場合ですけれども、「その状況の把握のため必要な情報の収集その他原子力災害の発生又は拡大の防止の円滑な実施に必要な業務を行うものとする。」ということで、この「円滑な実施に必要な業務」というところで、地方自治体との平常時における情報交換ということが含まれていると考えております。

この専門官の配置を決定した際の政治の思惑はどうであれ、いったん原子力災害が起きれば、原子力防災専門官は情報収集の中核を担い、住民避難等にも相当程度の権限を有することになる。では今回の福島原発事故で、「原子力防災専門官」はどのような役割を果たしたのか。新聞記事で拾ってみよう‥‥と思ってデータベースで新聞記事の横断検索をかけたら、7件しかヒットしない。たったの7件である! この注目のされなさ加減は、いったい何なのか、と感じてしまう(私も過日、知人から教えられたにすぎないが)

データベースで拾った記事7件のうち、主なものは以下だ。

*4月 1日 北国新聞の社説

*4月10日 福島民報 連載「原発崩壊」フクシマからの報告(上)
 この記事では、こういう記述の中に登場する。
‥‥「オフサイトセンターまで」。横田ら三人の原子力防災専門官はタクシーに飛び乗った。五キロ
ほど離れた大熊町にある国の緊急事態の拠点「原子力災害対策センター(オフサイトセンター)」
に向かう車中、これからやるべきことを整理した。
 当日の動きを追ったドキュメント記事の1エピソードである。

*5月29日 朝日新聞<指定席>原子力防災専門官・中嶋聡明さん 「安全」の基本は同じ /福井県
 この記事はいわゆる「人もの」である。

ほかの記事4本は佐賀新聞や北海道新聞など。いずれも原子力防災の仕組みを説明する中で、この語句が使用されている。しかし、いずれにしろ、今回のフクシマ原発事故で、この「原子力防災専門官」が果たした役割・果たせなかった役割に付いては、もっと取材が行われて良いのではないかと感じる。議事録検索をかけた限り、事故後の国会でも全く話が出ていない。不思議である。この専門官は、東海村の臨界事故を教訓として導入された制度である。それが実際どう機能したかの検証は極めて重要だ。もし何の役割も果たせていなかったのだとすれば、東海村の事故の教訓はたいして役立たなかったということになる。
by masayuki_100 | 2011-09-01 13:04 | ■2011年7月~