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ニュースの現場で考えること

名張ぶどう酒事件と密室司法

以前のエントリ逮捕の公表法制化は必要かの中で、こう記したことがある。

 逮捕権の濫用を防ぐ等の意味からいえば、逮捕公表の制度化よりも、もっと必要なのは「密室司法」「暗闇司法」などと形容される、捜査段階での密室性の排除です。刑事裁判でいつも問題になるのは、自白調書の任意性・信用性の問題です。これを防ぐには、密室の中での取り調べに風穴を開けるしかありません。つまり、起訴前の被疑者に国選弁護人をつける。これが一番、有効ではないでしょうか。あるいは、欧米のよに任意性を担保するために、取り調べの状況をすべてビデオ収録しておくことも有効かもしれません。
 被疑者段階での取り調べに弁護士を、などというと、「被疑者の人権ばかり守ってどうする」といわれそうですが、人権は被疑者も被害者も守らなければならないのです。また、強圧的な態度で取った調書は、有罪無罪は別にして、事件の真相解明の妨げ(動機の解明)になるような気もします。


「名張毒ぶどう酒事件」の再審決定のニュースを見ながら、「密室司法」の後進性を思わずには居られなかった。密室で強圧・脅迫的態度の下で得られた調書は、任意性に乏しい。有罪が確定すれば、今の社会ではすべて良しとされてしまう空気があるが、刑事事件の公判が「犯罪者を裁く」という意味だけでなく、公判を通じて社会が当該事件から何らかの教訓を汲み取るのだという意味においても、任意性に乏しい調書は問題なのだ。冤罪の原因だから、という理由だけではない。

来年度からは、起訴前の被疑者に対する国選弁護人制度が始まる。数年後には裁判員制度も始まる。そんな中で、「密室司法」だけを放置しておいて良いのだろうか。沖縄で米軍兵士による犯罪が起きた場合、その身柄引き渡しをめぐって日米双方がよく揉める。日本警察に一義的な捜査を認めない日米間の協定には大いに問題があるが、しかし、米側が時々口にする「日本の取り調べの仕組みは閉鎖的・一方的で、先進国とは思えない」といった主張自体は、あながち的外れではないと思う。

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by masayuki_100 | 2005-04-08 03:11 | ■社会