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ニュースの現場で考えること

東京地検特捜部名で司法記者クラブ各社に出された文書

なかなか眠れないので、今宵3本目のエントリである(笑)。 「世界に架ける橋」という朝日新聞の元記者さんが運営しているブログで知ったのだが、朝日新聞は昨年10月の新聞週間にちなんだ特集で「検証 昭和報道 ~ 捜査当局との距離は」という記事を掲載している。その中で、東京地検特捜部が司法記者クラブ所属の記者に発する「出入り禁止」措置について、以下のような用語解説を載せている。

「世界に架ける橋」さんの当該エントリから孫引きする。

<検察の出入り禁止> 87年、東京地検特捜部名で司法記者クラブ各社に出された文書では、出入り禁止とするのは(1)部長、副部長以外の検察官、検察事務官などへの取材(2)被疑者等への直接取材など捜査妨害となるような取材(3)特捜部との信義関係を破壊するような取材・報道をした場合とされている。
 禁止内容には、「担当副部長の部屋での取材不可」から、最も重い「最高検、東京高検、東京地検への出入り禁止」まで各種ある。


 「出禁」があることは当然知っているが、その根拠・運用が文書になっているとは、不覚にも知らなかった。

 これはいったい、何なのか。百歩譲って、(1)はまだ自分ところの組織の問題だから、そう宣言するのも分からないではない。しかし、この(2)はいったい何なのか。「被疑者等」の「等」は当然、弁護士も含まれるであろう。もし(2)の行為によって捜査が妨害されたとうのであれば、その記者を逮捕するなり在宅起訴するなりすればいいだけのことだ(もちろん、筆者はそれが良いことだと云っているのではない)。

 この文書が今も生きているのかどうかは知らないが、昨年10月の記事に掲載されているくらいだから、有名無実になったわけではあるまい。しかし、いずれにしても、こういう文書を出された時点で(おそらく)さしたる抵抗もなく受け取ったことは、報道機関としては言語道断の体たらくではないか。被疑者「等」の取材に行くなとか、余計なお世話である。「そんな文書を出されても実際は無視しているし、現場の取材活動に支障はない」という声もあろうが、それとこれとは、また違う話だ。

 上記の(3)の関係で云えば、これは地検の話ではないが、以前、道警の裏金問題を取材しているとき、取材班の記者が、道警幹部から「飼い犬に手を噛まれたようなものだ」と言われたことがある。私も知己の道警幹部から「これまでのおたく(北海道新聞)との信頼関係が崩れた」と言われた。(3)はあれと似たような話である。だから、仮に、どこかの新聞社なりが、検察の裏金を告発している三井環氏の発言などを徹底して報道していけば、この(3)に該当するということになるのかもしれない。
 組織と組織幹部が、組織の名をもってして語る「報道との信頼関係」など、しょせん、そんなものである。報道側が「取材先とは対等だ」と声高に力んでみても、日々の取材現場においては、要は、なめられているだけでないのか、と思う。そして、こうした関係はもはや、簡単には転換できない「構造」となって、目の前に立ち現れている。

 想像以上に、根は深い。
by masayuki_100 | 2010-02-02 05:18 | 東京にて 2009